私立男子校「立教小学校」の、他者のために行動できる子どもを育む全人教育

ぽてん読者の皆さまに、今注目の学校を紹介するこの企画。今回は東京都豊島区にある私立男子校「立教小学校」を紹介します。

学校法人立教学院が運営する立教小学校は、キリスト教信仰に基づく全人教育を実施しています。子どもの表現力を育む「日記教育」やキャンプを始めとする五感を使った体験学習など、立教小学校独自の教育プログラムを通じて、知識だけでなく子どもの人間性向上につながる教育を展開しています。

今回は教頭の天野先生にインタビューを行い、同校の教育理念や教育方針、それに基づく「対話」を重視した教育活動などの特徴的な教育プログラムについて詳しくお話を伺いました。

立教小学校は、人を笑顔にするため愛(利他)の心で行動できる人を育成

立教小学校の礼拝の様子

▲立教小学校のチャペル礼拝の様子

編集部

まずは立教小学校の概要、教育理念について教えていただけますか?

天野先生

本校の根幹には、立教学院の建学の精神「キリスト教に基づく教育」があります。一方で本校は1948年という戦後の時代に、立教学院の中で最後に設立された学校という側面も持っています。当時の学院の人々の間では、第二次世界大戦の経験を踏まえ「キリスト教の知識を持つだけでなくピースメーカー(平和をもたらす人)として行動できる人材の育成が必要ではないか」という考えが生まれていました。そのためには小学校教育が肝要であるとの考えから本校の設立に至ったという経緯があります。

そういった経緯を踏まえ、本校では「キリスト教信仰に基づく人間教育」を謳い、神の愛のもとで主体的に平和をつくり出していけるような子どもの育成を目指して教育を推進しています。キリスト教信仰に基づく人間教育は「愛の教育」とも表現されますが、この「愛」は「愛されている」という受動の愛のみを指すのではなく、人を愛するために自分は何ができるのかを考えるという「愛」です。人を笑顔にするために行動し、より良い未来をつくっていく、そんな子どもたちを立教小学校から輩出していきたいと考えています。

授業では「わからない子」が主役。人格形成に大切な“社会性”を育む教育を実践

立教小学校のiPadを使用した授業の様子

編集部

今お話いただいた教育理念のもと、立教小学校の教育では特にどういった点を大切にされているのでしょうか。

天野先生

立教学院では約20年の人格形成を見越した一貫連携教育を実施しています。その中でも小学校の6年間は、他者と協調する力を身に付けていくための大切な時期です。そのため本校ではテストで100点を取ることだけを目指すのではなく、相手を受け入れ、助け合えるような「社会性」を学校生活全般を通じて育んでいます。

例えば本校の授業では、理解できている子を主役するのではなく「わからない」「困っている」と言っている子を主役とすることを心掛けています。「わからない」という子に対して「何でわからないの?」ではなく「こうしたらどうかな」と寄り添い貢献する、そんな“弱さ”でつながるコミュニティの大切さを、本校の教育を通じて子どもたちにも体感してほしいと考えています。

日々の教育活動で「対話」を取り入れ、他者理解を促進

立教小学校の学校生活の様子

編集部

子どもたちの社会性を育んでいくために、具体的に取り入れている教育プログラムはありますか?

天野先生

相手の意見を尊重したり、自分とは異なる意見と出会ったときに折り合いをつけたりする力は、対話を通じて育まれていくものです。そのため本校ではクラブ活動や委員会活動、そして学活の時間はもちろん、教科指導の場面でも、対話を大切にしています。

必ずしも全員発言する必要はなく、友達の話を聞いているだけでも構いません。この時間を通じて多様な価値観との出会いや、自分も知らなかった新しい自分の発見につなげてほしいというのが対話の狙いです。

対話を大切にする教育方針は、本校のグローバル教育においても活かされています。立教小学校では全人教育の一環として英語教育を実践しており、語学力の習得にとどまらず他者への理解や協調のためのコミュニケーションツールとして英語を学んでいます。

「異文化」は海外のことのみを指すのではなく、隣にいる友達も「異文化」です。他者と時間と空間を共にすることをよろこぶというグローバルコミュニケーションの基本を学んでほしいという思いから、英語の授業においては「うたあそび」を取り入れているのが本校ならではの特徴です。

6年間毎日続ける「日記教育」で、言葉の使い方や表現力を身に付ける

立教小学校が行う「日記教育」のノート

▲日記教育では担任の先生からのコメントが必ず添えられる

編集部

他者との「対話」に重点を置く教育方針から、児童の言葉の力、表現力も重要視されているのだなと感じました。立教小学校では毎日日記を書く「日記教育」を実施されているとのことですが、その狙いも児童の表現力を高めていくところにあるのでしょうか。

天野先生

おっしゃる通りです。言葉というのは平和を導く使い方もできれば、人を傷つけてしまう武器にもなるものです。自分と向き合い、感じたことを言葉にする日記を通じて、良い未来をつくっていくための言葉の使い方を身に付けてもらいたいと思っています。

日記教育は本校設立当初から実施している伝統的な教育プログラムで、実は私も卒業生として毎日日記をつけていました。1年生から6年生までの6年間毎日日記を書いて提出する必要があるため、正直なところ当時は非常に苦労した記憶があります(笑)。しかし私自身の経験から、日記を通して自分と向き合い言葉にする重要性を実感しています。

日記はアウトプットの作業となるため、インプットのための読書教育も大切にしています。世界の名作と呼ばれる文学作品との出会いを通じて言葉の難しさと面白さに気が付き、そこで学んだ表現力は必ず、日記というアウトプットの形で発揮されるのです。

編集部

児童の皆さんはどのような内容の日記を書かれていますか?

天野先生

低学年だと本当に他愛もない内容が多いのですが、高学年になると学習の振り返りとして日記を活用する児童が増えてきます。学校での学びと日常生活が結びつく、そのつなぎ目の役割を日記が果たしている面があるのだと思います。

その一例として「算数で線対称を学んで、日常生活の中でも線対称のものを見つけた」といった内容や、「社会科で学んだ内容が、家で新聞を読んでいるときに出てきた」といった内容の日記があります。学校の勉強は学校内だけで完結するものではなく日常生活とつながっているものであり、日記に表現することでそのことに改めて気づきを得ているのではないでしょうか。

編集部

言語化能力や表現力に加え、学びの視野の広がりにも日記が寄与しているんですね。その他にも日記を6年間積み重ねることの意味はどういった点にあると思われますか?

天野先生

1日を振り返り、次の日からの目当てを自分でつくり、それをまた振り返るというサイクルが日記によって生まれています。そのサイクルを言葉によって生み出しているのもポイントです。

本校の学校生活はお祈りという、まさに言葉で1日を始めて言葉で1日を締めくくるサイクルとなっています。お祈りだけでなく日記によっても、言葉で毎日のサイクルを回していく習慣が得られているのだと思います。

また日記には必ず担任の先生からのコメントが返されます。パーソナルな悩みを日記を通じて打ち明ける児童もいて、そういう場合には担任の先生は真摯に向き合って対応しています。悩みごとに限らず自分の書いたことにリアクションがあるとうれしいものですよね。毎日日記を書くのは大変ではありますが、読んでくれる人がいてリアクションしてもらえるから毎日の生活のエネルギーとなっている部分もあるのではないでしょうか。

調理に火おこし!「立教小学校」の五感を使った体験学習で子どもの生活力を向上

立教小学校のキャンプでの調理の様子

▲6年生のキャンプでは子どもたちがメニューを考え、全員分の料理をつくる

編集部

その他に、立教小学校ならではの特徴的な教育プログラムをご紹介いただけますか?

天野先生

本校では1人1台iPadを保有するなど先進的なICT教育を展開している一方で、五感を使った体験的な学びの機会も非常に大切にしています。

例えば2年生から4年生までの縦割りで行くキャンプでは、テントをつくったり火をおこしたりといったことを2年生のときから体験しています。AIが発展する時代だからこそ、最新の機器を扱うのと同時に、泥臭い体験機会を通じて生活力を身に付ける、その両方を重要視しているのが本校の教育の特徴です。

立教小学校のキャンプの様子

▲キャンプ体験を通じてアウトドアスキルも習得

天野先生

中でも特に重点を置いているのが、調理の機会です。本校は学年問わずさまざまな場面で、命をいただくことに感謝する機会を設けています。本格的な調理実習は4年生からですが、1年生の頃から高学年の調理を手伝い、できあがったものを一緒に食べる経験をしています。最近では低学年の児童が生活科でつくった野菜を使って高学年と一緒に調理するという取り組みもしているんですよ。

これらの五感を使った体験学習の集大成となるのが、6年生で行うキャンプです。

2泊3日の日程で、自由時間のアクティビティなどをすべて児童主体で決めていきます。夕食も、120人の男子児童が40人ずつの3グループに分かれ、自分たちだけで120食をつくっています。ただつくるだけでなく、メニューから食材まですべて考えて調理してくんです。

メニューを決めてから必要な食材や調理手順を考えていくわけですが、40人1グループで120食分をつくるための理数的な力やタイムマネジメントの力など、幅広い人間力が求められる体験となっています。

今年度のメニューはなかなか意欲的で、辛さが選べる麻婆豆腐や、辛さと具材が選べるカレーなどをつくっていました。メニュー決めの根底にあるのは「友達においしいといってもらうために何ができるか」という、本校の教育理念に通じる他者を思う心です。「辛さや具材が選択できるようにする」というアイディアも、多様な好みに対応したい優しさから生まれたものなのだと思います。

体験学習を通じてSTEAM教育や感謝の心を学ぶ

編集部

調理を中心としたこれらの体験学習を通じて、子どもたちにどのような力が身に付いていると思われますか?

天野先生

我々はこれらの体験を、料理をしたときに出る湯気“steam”になぞらえてSTEAM教育と呼んでいます。1つの料理をつくりあげていく過程で、サイエンスやテクノロジー、エンジニア、アートという「STEAM教育」の要素を体験的に習得できると考えています。

また自分で1から調理をする大変さを経験することで、自分の周囲にあるさまざまなものが、いろいろな人が携わってできあがったものであることを実感できます。そこから、これまで当たり前に享受してきたあらゆるものへの“感謝の心”が芽生えてくるのがこの学習の大切な意義です。

周囲への感謝の心は、人が社会で生きていく上でとても重要です。本校の体験学習は皆で協力して行うものであるため、周囲との協調や共に生きる心が育まれていくのもポイントです。

低学年の児童はまだ視野が狭く自分のことしか考えられない子も多いのですが、異学年で調理やキャンプする中で「自分もいつか大きくなったら同じように小さい子をサポートするんだ」という意識が自然と育まれていきます。6年間のさまざまな体験を通じて視野を広げ、周りに感謝しながら周囲のために行動できる子どもが育っていくのだと考えています。

立教小学校からのメッセージ

立教小学校教頭の天野先生

▲インタビューにご対応いただいた天野先生

編集部

最後に、立教小学校での学校生活に興味を持った読者の方に向けてメッセージをお願いします。

天野先生

男の子しかいない学校のため、いつも賑やかですし、多少の小競り合いは日常茶飯事です。しかし一方で、誰かが困っているときに助けてくれる、そんな男の子たちの優しさに力をもらう毎日でもあります。

今の世の中は子どもたちが怖いと感じてしまうような出来事も多いですが、本校の教育を通じて「皆でより良い未来をつくっていこう」と思えるような子どもを育てていきたいと考えています。誰かの笑顔のために一所懸命汗を流せる男の子たちの様子を、ぜひ一度立教小学校に見に来ていただけたらと思います。

編集部

天野先生、本日は貴重なお話をお聞かせいただきありがとうございました!

立教小学校の保護者の口コミ

ここでは、立教小学校に寄せられた口コミを一部抜粋して紹介します。

(保護者)キリスト教信仰に基づき、一貫性のある教育方針がある。先生は一人ひとりの児童の個性を尊重し、愛を持って丁寧に指導してくれる。

(保護者)日記教育など、他の学校にはない教育が受けられる。英語教育やICT教育など、将来活躍するための学びの基礎づくりを行ってもらえる。

(保護者)キリスト教主義の学校ならではのチャペルやタワーベルなど施設が魅力的。冷暖房も完備のため勉強に集中できる。

教員による愛のある指導や他にない教育プログラムに魅力を感じている声が聞かれました。また施設に対する高評価の声も多いのが印象的でした。立教小学校では2027年に向けて新校舎建設の建設が予定されているため、さらなる教育環境の充実が期待されます。

立教小学校へのお問い合わせ

運営 学校法人立教学院
住所 東京都豊島区目白5-24-12
電話番号 03-3985-2728
公式ページ https://prim.rikkyo.ac.jp/

※詳しくは公式ページでご確認ください