独自の教育を実践する注目の学校を紹介する本企画。今回は、大阪府交野市にある中高一貫の共学校「関西創価中学校」を紹介します。
同校は未来を創るグローバルリーダーの育成に努めています。今回は、とくに関西創価中学校の教育理念や特徴的な取り組みについて、上原教頭先生と英語科の津田先生にお話を伺いました。
この記事の目次
豊かな人間性と真の「実力」を育む、関西創価中学校の建学の精神
最初に、御校の建学の精神についてお聞かせください。
本校は、創立者の池田大作先生が示された「他人の不幸のうえに自分の幸福を築くことはしない」を信条とし、平和教育に力を入れ、教育方針には「健康な英才主義」「人間性豊かな実力主義」の2つを掲げています。
また、『創価学園の五原則(「生命の尊厳」「人格の尊重」「友情の深さ・一生涯の友情」「暴力の否定」「知的・知性的人生たれ!」)』や、創価学園の合言葉(「先輩は後輩を、弟・妹のようにかわいがって、大切にしていかねばならない」「後輩は先輩を、兄・姉のように尊敬していかねばならない」「絶対に暴力やいじめを許してはならない」)』など、多くの創立の精神が生徒たちにも浸透していると感じています。
「人間性豊かな実力主義」とはどのような意味でしょうか?
ただ単に有名大学をめざしたり、知識をつめこむ教育では、他者の幸福のために尽くしていけないと考えています。そのうえで、一人ひとりがもつ無限の可能性をひらき、社会で活躍できる実力をつけていこうということです。
その「実力」とは、認知の学力だけではなく、行動力や探究心など、非認知能力を含めて資質・能力を指しています。単に勉強ができるという意味ではなく、他者の幸福のために尽くす力をつけていこうという意味での実力主義です。
五原則に「一生涯の友情」とあります。中高一貫校等で一生涯の友だちができたという話はよくお聞きしますが、こうした五原則の中に入っているのは珍しいかと思いますので補足していただければと思います。
学校にいる6年間、または3年間は友だちが側にいるのが当たり前で、「一生涯の友情」という言葉の重みを感じることも少ないかもしれません。しかし、社会に出ると、それぞれがさまざまな辛いことや困難、挫折を味わうこともしばしばです。
だからこそ、順調なときばかりではなく、困難に直面したときにこそ、支え、励ましあえるような友情をこの中学時代に築いてほしいという願いがこの言葉に込められていると思っています。
「先輩は後輩を大切に、後輩は先輩を敬う」関西創価中学校の校風
▲校内フィールドワーク(異学年交流)
生徒の皆さんが卒業された後も、関西創価中学校で育まれた関係性は繋がっていくのでしょうか。
そうですね。卒業生との繋がりはとても強く、それが本校の強みであるとも思っています。例えばキャリア教育の観点で、卒業生が本校で講演会を行ってくれます。「後輩のためなら、いくらでも自分の経験を話します」と、ボランティアで来てくれます。
弁護士講座では、弁護士になった卒業生たち10数名が来校し、各クラスで講義をしてくれました。また、医学部に行った卒業生が、後輩のために勉強のノウハウを教えてくれたりと、卒業生に支えられている部分はとても大きいと思います。
▲アメリカ創価大学研修
後輩の面倒を見るというのは、創立者の教えなのでしょうか?
はい。その上で、後輩は先輩たちの姿を見習っていることも大きいです。
例えば、創価大学にて大学の講義を体験する研修があるのですが、交流の窓口になってくれている大学生の団体が本校生徒をサポートしてくださいます。その中にも多くの卒業生が所属しているのですが、そこでの交流を通し、生徒たちは大学入学後、同じように後輩たちのサポートをしたいからと、その団体に所属するそうです。
本校には、「先輩は後輩のために」の校風が醸成されており、自分が受けたものは後輩に返していく、そのような伝統がしっかりと受け継がれていると思います。
異学年交流の機会も多く、先輩から多くのことを学ぶ
▲校内フィールドワーク(異学年交流)
創価学園の合言葉には、「先輩は後輩を、弟・妹のようにかわいがって、大切にしていかねばならない」や「後輩は先輩を、兄・姉のように尊敬していかねばならない」とありますが、それを生徒たちにどのように伝えていますか?
本校では異学年交流の機会が多くあります。中高の校舎も一緒ですし、中高合同のクラブもあります。また、創立精神の学習の時間や道徳の時間になると、自然と中学1年生から高校3年生までが1つのグループになり、歴史を学んだり、学校生活をより良くしていくために対話したりする時間が6年間を通じてあります。そのような機会を通じて、先輩・後輩の絆が育まれているように思います。
そうした御校の文化を象徴するエピソードがありましたらお聞かせください。
本校はビブリオバトルに取り組んでおり、昨年は中学の全国1位も、高校の全国1位も、大学の全国1位も本校出身者でした。そのような中で大学生大会で1位になった先輩が、中学生大会の前に学校に来校し、後輩にアドバイスや激励をしてくれました。
このように、所属していたクラブに来てくれるのはもちろんですが、さまざまなシーンで、いろいろな知識やスキルを、惜しげもなく後輩に伝授してくれています。
卒業生を含め、先輩が後輩をサポートする姿は、本校のあちこちで当たり前の光景として見受けられるので、逆に意識したことがありませんでした。
創立精神への理解を深め、SDGsに繋ぐ探究学習
▲探究学習の様子
御校の探究学習への取り組みについて教えてください。
以前は土曜日登校の時間に探究の時間を設けていましたが、2022年度から週に1時間、探究の時間を設けています。
前期は異学年交流として、中学1年生から中学3年生までのグループが集まり、楽しいゲームなどから始めます。毎年度当初には、「校訓を生活で体現するには?」などのテーマで話し合い、学年が上がるごとに、さらに深く生徒が対話を重ねていきます。
後期では2月の探究発表会に向けて、学年ごとにグループを作ります。各学年のテーマに沿って探究し、その成果を発表します。
3年生では、SDGsの1つのゴールを選び、それに対して私たち中学生はどんなアクションを起こすことができるのかを考え、アクションプランを立てます。
それまでに、1年生では合意形成を学び、2年生では「みんなのウェルビーイングを達成するために自分たちには何ができるか」を探究して発表します。そして3年生では、地球規模の課題に対してどのように行動するかを探究する学習を行います。
▲探究学習
探究学習を通して生徒さんにどのような気づきや成長があったと思われますか?
私は2023年に2年生を担当しており、そのときは10月頃、職場体験に行きました。そこからの繋がりで、2年生の探究発表会のテーマとして「ウェルビーイングの実現」を掲げました。職場体験でお世話になった事業所の方から聞いた職場の問題について、生徒たち自身でインタビューも行いながら、対応策を考えました。
社会にはそういう問題があるということを、目で見て、肌で感じながら発表まで持っていくことができたことによって、「世界平和はどこかの誰かがやってくれるでしょう」ということではなく、自分たちが責任を持って解決すべきことだという学びに繋がったと思います。
具体的にはどんな悩みや問題があったのでしょうか?
例えば、学校や保育園に職場体験に行った生徒が、教育業界の問題点を肌で感じました。彼らは教育業界で働きたいと思いましたが、大人の話を聞くと現実は厳しいと知りました。そこで、教育業界の先生方や学校、保育園がどうすれば幸せになれるかを考え、グループ発表しました。
その生徒たちは、日本の学校教育の問題点を取り上げました。日本の学校と他国の学校を比較し、オンラインで他国の教員にインタビューも行いました。その結果、日本の学校教育に対する改善提案を発表しました。
生徒が取り上げた教育業界の問題点は、長時間労働などですか?
そういった報道でよく目にする内容や不登校生徒の増加、学校にカウンセラーがいるかどうかなど、細かい問題まで考えていました。
具体的な問題や実際の声を拾いながら、海外と比較し、自分たちで考えたわけですね。
はい。また、公共関係で働いた男子生徒はゴミ問題に興味を持ち、海洋プラスチックゴミに繋がり、それを減らそうと努力している研究者にインタビューすることにしました。ありがたくも本校の卒業生に該当する方がいらっしゃったので、その方へのインタビューをもとに、海洋プラスチックゴミを減らすための発表を劇を交えながら行いました。
発表の形式として劇もあるのですね?
保護者や受験希望者、関係者、インタビュー対象者も来るので、わかりやすければ形式は自由としています。
関西創価中学校の特色あるスクールライフ。「班活動」と「チーム担任制」
▲競技大会
そのほか学校生活全般において特徴的な取り組みがあれば教えてください。
本校では、生徒が基本的に行事の運営をしています。その中で、映像配信や撮影、音響を担当する放送班、行事の運営や参加者の整理誘導を担う「新世紀栄光班」、病気やけが人の救護を行う救護班、各行事の写真撮影を担当する写真班等の「班活動」があり、それは本校の特徴かと思います。
こちらも縦割り、異学年交流になっているかと思いますが、どのような雰囲気で進められているのでしょうか?
帰属意識は高まっていると思います。そもそもメインで所属しているクラブ活動はバラバラですので、行事で何か担当する際は、普段関わることがないメンバーとも関わることができるので、交流の範囲も広がります。
いろいろな行事に向けて班活動も走るってことでしょうか?
そうですね。運動会や三大行事(栄光の日・情熱の日・英知の日)もそうですし、例えば先ほどお話しした講演会や放送での朝会があるとき、学年での放送を使ったイベントがあるときも動きます。けっこう忙しいですね。
いろいろな個性や特性を持った生徒がいる中で、クラブ活動や班活動、いろいろな居場所があった方が学校生活は楽しく有意義なものになると考えています。
御校の「note」でチーム担任制を導入したと拝見しましたが、それについて教えてください。
2024年度から中学校では、学年ごとではありますが固定担任制を廃止して、チーム担任制を開始しました。医療の世界では、チーム医療と呼ばれるように、患者にとって最善の治療を提供するために、専門性を活かしたチームで対応します。一方学校では一人の担任がすべてを抱えてしまっているような現状がありました。
教員も人間ですから、それぞれ持っている雰囲気や特徴も違います。固定担任を廃止することで生徒にも選択権ができ、今年から生徒たちの顔がこころなしかイキイキとして見えます。
チーム担任制で目指すのは、教師が生徒を「育てる」という教師が主語の学校ではなく、生徒が「育つ」という生徒が主語の学校です。
関西創価中学校からのメッセージ
▲取材に対応いただいた上原教頭(左)と津田先生(右)
最後に、御校に興味を持ったお子さまや保護者の方に向けてメッセージをお願いします。
本校では、生徒一人ひとりを大切にしています。誰も置き去りにしないことに徹し、どんな個性や特性を持ったお子さんも、安心して学べる環境を整えています。
すべての子どもたちが、学習面だけでなく、生活面も、感性・心も成長できる場を提供しておりますので、どうぞ安心して来ていただければと思います。
もし本校に興味をもっていただけたのであれば、まずはぜひ一度足を運び、学校の雰囲気を感じてみてください。また、「note」で中学校の様子を紹介していますので、こちらもぜひご覧ください。
■関西創価中学校の公式noteはこちら
https://kansaisoka-jhs.note.jp/
本日は貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。
関西創価中学校を卒業後の進学実績
中学校の生徒が基本的に進学する関西創価高等学校からは、ほとんどすべての生徒が大学に進んでいます。創価大学だけでなく、国公立大学や難関私立大学の合格実績も数多くあります。
2023年度の進学実績(既卒生を含む)としては、166名が創価大学に、5名が創価女子短期大学に推薦入学しています。海外大学は、デラウェア大学 (University of Delaware)に1名、アメリカ創価大学(ブリッジプログラム合格者6名含む) に10名が進学しています。
東京大学、京都大学、大阪大学、神戸大学を含む国公立大学へは34名が合格しています。主な私立大学は、関西学院大学14名、関西大学8名、同志社大学9名、立命館大学9名ほか多数合格しています。
■進路実績(関西創価中学校公式サイト)
https://kansai-senior.soka.ed.jp/career/performance/
関西創価中学校の在校生・卒業生・保護者の口コミ
ここからは、関西創価中学校の口コミを紹介します。在校生や卒業生、保護者の声をまとめました。
オープンキャンパスで在校生の元気に明るく振る舞う姿を見て、こんな人たちのようになりたいと思ったことが入学のきっかけでした。学園生時代に頑張ったことは、吹奏楽部での活動。中高6年間、日本一を目標に掲げ、日々練習に励みました。そして、中学、高校共に全国大会の舞台で演奏できたことは最高の思い出です。(2012年3月卒業生)
私は自分の可能性を広げたい、と英検に挑戦することを決めました。関西創価学園は英検前になると英語の先生方が英検対策の時間を取ってくださり、わからないところを丁寧に教えてくださいます。また、図書館には英語の教材がたくさんあるので自主学習もはかどります。合格したときの達成感は格別で、もっと上の級を目指そう、という目標もできました。(在校生/中学3年生)
さまざまな分野でリーダーとして活躍できる人材の育成に取り組んでいる学校です。同期のつながりが強く、卒業後も「同窓の集い」を定期的に行い、お互いの原点を確かめ合うことができます。勉強に偏ることなく、人間教育に力を入れている点が素晴らしいと思います。内部進学で関西創価高校へ進学する生徒が多いですが、ICTを活用しての学習など、時代の変化に合わせて常に良いものを取り入れながら生徒の学力向上に努めています。(保護者)
関西創価中学校へのお問い合わせ
運営 | 学校法人創価学園 関西創価中学校 |
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住所 | 大阪府交野市寺3-20-1 |
電話番号 | 072-891-0011 |
問い合わせ先 | https://kansai-junior.soka.ed.jp/contact/ |
公式ページ | https://kansai-junior.soka.ed.jp/ |
※詳しくは公式ページでご確認ください