特色ある教育に取り組む注目の学校を紹介していくこの企画。今回は、兵庫県神戸市にある私立小学校で、県内最古の歴史を持つ「須磨浦小学校」をご紹介します。
1902年(明治35年)に創立された同校は、「体・徳・知」という独自の教育方針を掲げ、たくましい体、思いやりと誇り、伸びやかな知性を育てることを目指しています。
須磨浦小学校の大きな特徴は、1学年1クラスの少人数制教育と、全学年で実施される充実した宿泊行事です。さらに、アメリカの小学校との国際交流プログラムやネイティブスピーカーから直接教わる英語の授業など、グローバル教育にも力を入れています。
この記事では、校長である岩渕正文先生と教頭の佐山公章先生にインタビューを行い、同校の教育理念や特徴的な取り組みなどについて詳しく教えていただきました!
この記事の目次
須磨浦小学校の成り立ちと豊かな自然に囲まれた立地
最初に、須磨浦小学校の歴史について教えていただけますか?
本校は今から120年以上前の1902年に創立した伝統ある学校です。当時から須磨は別荘地として名高く、京阪神の政財界で成功された著名人が別荘を構えていたんです。そこに集まった方々のうち7名が、「公教育では物足りない」という想いを持っていたことで共に動き出し、学園設立に至りました。
創立者には、住友グループと大阪財界が発展していく基礎を築いた廣瀬宰平(ひろせさいへい)さんや、近隣に多くの不動産を持っていた芝川又右衛門さん、外交官として活躍された河上謹一さんなど錚々たるメンバーが揃っていました。
そんな方々の「これからの日本の教育に必要な学校を作ろう」という志から誕生したのが、私たち須磨浦小学校なんです。
別荘地ということで、周辺環境もすごく良さそうですね。
おっしゃるとおりで、本当に「風光明媚」という言葉がピッタリです。学校から大阪湾が一望できますし、最寄駅の須磨駅(JR山陽本線・山陽電車)からは須磨海岸がすぐそこなので、子どもたちにとって海はすごく馴染み深い存在ですね。
それに加えて、山手の方に向かうと名所の須磨寺がありますし、このあいだ全学年で遠足を実施した鉄拐山(てっかいさん)などのスポットも近隣に多いので、みんな自然に包まれた環境でのびのびと過ごしています。
「体・徳・知」を重視し、少人数制を貫く教育方針
▲少人数だけに子どもたちのつながりは強い。画像はアメリカ・リッチモンド小学校の児童を招いたときの様子
須磨浦小学校の教育方針について教えてください。
本校では、「体・徳・知」という3本柱の教育方針を掲げています。柔らかい言葉で表現すると、「たくましい体、思いやりと誇り、伸びやかな知性を育てる」ということになります。これは建学の精神でもありますし、現在に至るまでずっと継続している考え方ですね。
ちなみに、明治初期に政府が打ち出したのは「知・徳・体」の三育を一体とした教育方針で、本校ではその順番を変えたことになります。理由としては「世界で通用するにはまず体力が必要である」という考えているからで、そのことは小規模校ながら体育の専科を置いていることからもおわかりいただけると思います。
小規模校ということですが、少人数制の教育も御校の特徴なのでしょうか。
はい。我々は創立当初から1学年1クラスという形式を続けています。人数は学年によって十数人〜三十人程度までと異なりますが、少人数教育でしっかりと見ていけるというのは本校の特徴のひとつですね。
人数が少ないがゆえの特徴として、学年が変わっても同じクラスなので横のつながりが非常に強いことが挙げられます。また、それだけではなく異学年が交流する行事を多く設けていますので、縦のつながりも自然とできてくるんです。
須磨浦小学校の全学年で実施される宿泊行事
▲修学旅行で6年生が長崎を訪れたときの様子。平和学習にも力を入れている
須磨浦小学校のさまざまな取り組みの中で、特徴的なものについて教えていただけますか?
本校の大きな特徴は、1年生から6年生まで全学年で必ず宿泊行事を実施していることです。例えば1年生が入学して1ヶ月後には、2年生と一緒に縦割りの班を組んで宿泊訓練を実施しています。
これには、新入生に早く学校に慣れてもらうことと、2年生が1年生のお世話をする経験をさせるという目的があるんです。
最近は近所の年齢が異なる子ども同士で遊ぶようなことも減っていると思いますし、学校でそのような機会があると児童にとっても大きな経験になるのでしょうね。
おっしゃるとおりだと思います。2年生は1年生の面倒を見ることで急に大人びたように感じ、精神面ですごく成長が見られます。
数か月前までは自分が最下級生だったのが、1年生が入ってきたことで「自分たちがしっかりしなければ」と思うのか、驚くほど変わりますね。
かまくら作りや無人島でのキャンプなど、特別な体験ができる
▲美方高原で開催された3年生のウィンタースクール。パウダースノーに全身で飛び込んで楽しんでいる
他の学年では、どのような宿泊行事がありますか?
いろいろなものがありますが、3年生の冬にはウィンタースクールを実施しています。どの学校さんでもスキー教室などはよく開催していると思いますが、須磨浦小学校ではいわゆるバックカントリー(※)で行うのが特徴的ですね。
(※)スキー場などの整備されたエリアではない、未整備の雪山などを指す
もちろんプロのインストラクターが引率するのですが、子どもたちはスノーシューを履いて背丈ぐらいの雪の中にザクザクと入り込んでいくんです。そこでかまくらを作ったり、野生動物の足跡を追って観察したりします。
圧倒的な雪の中で過ごすのは児童にとっても得難い経験になっているようで、卒業してからも「ウィンタースクールはすごく楽しかった」という声は多く届いています。
▲自分たちで作ったかまくらで「キャンドルナイト」を経験
ウィンタースクールがあるということは、サマースクールもあるのでしょうか。
そのとおりです。4・5年生の夏に行うのがサマースクールで、2泊3日で海にキャンプに行きます。香川県の小豆島は有名だと思いますが、その横にある余島という無人島で開催するんですよ。船でしか行けないので児童たちが分乗して渡り、3日間は児童と教員・インストラクターだけで過ごします。
サマースクールでは縦割りで班を組み、ヨット・カヌー・アドベンチャー・海釣り・アーチェリーの中から希望するアクティビティを体験します。ヨットを希望した児童は1人乗りのヨットを自分で組み立てて、海に押し出し、操船するところまでをやるんです。
また、カヌーだと島の周りをぐるっと一周したり、夜にはみんなで夜空の星を鑑賞したりと、普通の旅行などではできないような経験ができますね。
▲サマースクールで投釣りに挑む児童たち
また、6年生になると修学旅行として長崎に行きます。長崎原爆資料館・長崎市平和会館での平和学習や、ハウステンボスでは外国の方と交流したりと、6年間の集大成として様々な経験を積んでいきます。
▲修学旅行で訪れたハウステンボス
アメリカの現地校と相互に交流する独自のグローバル教育
▲国際交流プログラムの一環で、リッチモンド小学校の児童が訪れた際の交流授業
須磨浦小学校では、グローバル教育にも力を入れていると伺いました。代表的な取り組みについてお話しいただけますか?
代表的なものは、4年生以上の希望者が参加する国際交流プログラムですね。本校は、アメリカのオレゴン州・ポートランドにあるリッチモンド小学校と1999年から親善を深めていて、さまざまな機会で交流しているんです。
毎年6月には、リッチモンド小学校から20名前後の子どもたちが本校を訪れ、ホームステイをしながら学校に通います。初めに歓迎セレモニーを実施するほか、授業や給食などを含め下校まで一緒なので、非常に楽しい時間を過ごしています。
また、2月には逆に本校の児童が10日間ほどポートランドを訪問します。特徴的なのは到着後すぐにホストファミリーと過ごすことで、ホテルに泊まって終わりという、いわゆる旅行の感覚ではないわけです。
リッチモンド小学校は日本語でのイマージョン教育を行っており、日本に対する関心が強い学校です。本校の児童は現地の子どもたちと一緒に授業に参加しながら、ときには茶道などの日本文化を紹介するなど、積極的に交流していますね。
▲ポートランドへの訪問では、現地の小学校に通ったり、名所を観光したりといろんな体験ができた
これらの体験により、子どもたちはどのように成長していきますか?
やはり、自分で意思を伝えること、自己主張ができるように変わっていくというのはありますね。携帯電話などは持っていかないので、困ったらホームステイ先のご家族に自分で伝えなければなりません。そのような経験を経て、子どもたちは一回りも二回りもたくましくなって帰ってきます。
授業以外にも英語に触れる機会が多く、どんどん成長していく
国際交流では英語を使うこともあると思いますが、英語教育についても詳しく教えてください。
本校では、各学年にネイティブスピーカーを必ず配置しているのが特徴です。英語力によってクラスの児童を2つに分け、それぞれにネイティブスピーカーと日本人教師が入ってチームティーチングを行っています。レベルに応じた英語教育を実施しているので、自分のペースで成長していけます。
また、単純に英語に触れる機会も多いですね。英語の授業のほかに、5年生と6年生は月曜から金曜日まで帰りのホームルームの10分間を使って「イングリッシュタイム」を設けています。英語の歌で楽しく言い回しを覚えたり、そこに出てくる単語や熟語、文法を学ぶようなプログラムになっています。
また、放課後には月曜日・火曜日・木曜日に英語教室を開設しています。これは希望者が対象ですが、ほぼ毎日英語を話したり聴いたりできるような環境を整えています。
そのような取り組みの成果はいかがでしょうか?
やはり小学校のうちは英語に慣れることが大事で、本校はその機会がたくさん用意されていることもあり、多くの児童が英語力を伸ばしています。インターナショナルスクールの幼稚園から入学し、英語力をさらに伸ばしたいというご家庭もありますが、そのようなご期待にも応えられていると思います。
須磨浦小学校の卒業後、4人に1人以上が難関中学へ進学する
須磨浦小学校の進学実績について教えていただけますか?
本校は申し上げたように私たちは小規模な学校ではありますが、進学実績は非常に優れているんです。例えば2023年度は、全国的に有名な灘中学校に2名、甲陽学院中学校に2名、六甲学院中学校に1名が進学しました。また、トップレベルの共学校である須磨学園や白陵にも複数名が進学しています。
過去6年間の実績を見ると卒業生の28%、つまり4人に1人以上が、進学塾が発表している偏差値で60以上とされるいわゆる難関校に進学しています。人数ではなく比率で考えた場合、非常に高い割合で難関中学への進学を実現しています。
また、本校の大きな特徴として、多くの私立中学校に連携していただき「提携校入試」を行っていることが挙げられます。現在、阪神間の10校と提携しており、校長の推薦状を持って受験することができます。これは成績だけでなく、学校生活全般を見て推薦させていただくものです。
須磨浦小学校が最も大切にしているのは、子どもたちやそのご家庭の第一に希望する、その子に合った学校への進学を全力で応援することです。一人ひとりに合わせたきめ細かなサポートができるのが、小規模校の強みだと考えています。
須磨浦小学校から読者へのメッセージ
▲須磨浦小学校の校長である岩渕正文先生
最後に、須磨浦小学校から読者の皆様へメッセージをお願いいたします。
本校は、児童同士だけでなく学校と保護者の皆さんとの結びつきも強いことが自慢の学校です。いわゆるPTAに相当する「父母の会」が中心となって様々な行事を運営していて、例えば園遊会という文化祭のような行事では、児童のために楽しい催しを企画してくださいます。
保護者の方々は非常に協力的で、子どもたちのために何かしてあげようというパワーを感じますし、少人数制ということもあって父母ともに保護者同士が仲が良いんです。
須磨浦小学校は、子どもたち一人ひとりの夢をかなえてあげたいという想いを持っています。その想いを実現するため、学校と家庭が連携し、子どもたちにとってより良い環境を整えています。そんな本校に興味を持ってくださったのであれば、ぜひ入学をご検討いただければありがたいです。
本校が大切にしているのは、「本物」に触れるという教育です。先ほどお話しした無人島に行くなどの宿泊行事もそうですし、普段の授業においても理科の実験や観察などを重視しています。
また、進学サポートに関していうと、中学入試までの半年間は塾とコラボレーション授業を行っています。進学塾の強みを本校のエッセンスとして取り入れながら、学力を高めているんです。
我々は、学習面でもそれ以外でも全ての場面において「本物」というものを子どもたちに提供できる学校であると自負しています。子どもたちの夢の実現をサポートしながら、本物の体験や学びを通じて、豊かな人間性と確かな学力を育む教育を提供しているので、ぜひ多くの方に知っていただきたいですね。
本日は貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました!
須磨浦小学校の卒業生の口コミ
須磨浦小学校の卒業生の皆様の声を集めましたので、そこからいくつか紹介いたします。
全体的に、少人数制のため勉強や行事の際にしっかりと見ていてくれることや、先生方が温かく接してくれるため良い思い出が残っているという意見が多かったです。また、さまざまな行事が印象に残っているという声も複数ありました。
■卒業生の口コミは、公式サイトから抜粋しています。
http://sumaura.ed.jp/about/g_voice/
須磨浦小学校の基本情報
名称 | 学校法人 須磨浦学園 須磨浦小学校 |
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住所 | 兵庫県神戸市須磨区千守町2-1-13 |
電話番号 | 078(731)0349 |
問い合わせ先 | 公式サイト参照(電話・Eメール) |
公式URL | http://sumaura.ed.jp/ |