独自の教育を実践する注目の学校を紹介する本企画。今回は、東京都板橋区にある共学校「淑徳小学校」を紹介します。
同校は、大乗仏教精神に基づき、情操豊かな人材を育成することを目指して、1949年に創立された伝統ある小学校です。創立当初から英語教育を実践しており、国際感覚を養うために、6年間を通して英語の授業を取り入れています。
今回は、そんな淑徳小学校の教育目標や特徴的な取り組みについて、総務広報・入試担当の細川先生と国際理解教育担当の新井先生にお話を伺いました。
この記事の目次
感謝する心・慈しむ心・創造する心を育む、淑徳小学校の建学の精神
最初に、淑徳小学校の建学の精神や教育理念についてお聞かせください。
2024年に創立75周年を迎えた本校は、大乗淑徳学園が運営している学校の一つです。本学園は、明治時代に浄土宗の尼僧によって設立された「淑徳女学校」と、大正時代から活動してきた社会福祉施設とその教育部門である「大乗学園」が、戦後に合併して大乗淑徳学園となりました。
私たちは大乗仏教精神を建学の精神として、それを「利他共生」と「感恩奉仕」の言葉で表しています。大乗仏教精神による教育は、仏様の前で謙虚に自己を見つめ、周りに感謝し、一生懸命に努力する児童を育てることにあります。
そして、この建学の精神を小学生向けに3つの心「感謝する心」「慈しみの心」「創造する心」と表現し、これを大切な理念として掲げています。そうした教育理念のもと、一人ひとりを大切にする温かい教育や熱心な学習指導で、高い評価をいただいていると自負しております。
勉強することはそれ自体がとても素晴らしく、大切な価値を持つ目標です。しかし、勉強だけできれば良いわけではありません。心優しく、豊かな情操を持って勉強ができることが理想だと考えています。
勉強も大事だけれども、児童にとってもっと大切なことがあるということですね。
そうですね。学びを大切にしますが、それは何のためなのか、その学びの先が大切だと考えるのが大乗淑徳学園であり本校です。
まず、自分を生かしてくれる、周りのすべてに感謝し、慈しみの心を持つことを大事にします。
では、感謝した後はどうすれば良いのでしょうか。やはりご恩返しをしたくなるものです。ご恩返しとは、「ありがとう」と言葉にすることも当てはまりますが、さらに自分を高めて自分も周りも幸せにする、そんな行動をとれることが本当の恩返しになると思います。
いくら優秀であっても、自分勝手で周りが幸せにならないのであれば、意味がありません。力が足りなければ自分を鍛え、困難があれば工夫して、自分も周りもより良い生活、より良い社会、より良い未来を目指さなくてはならないと考えています。
こうした感謝奉仕の心を持ち、より良いものを作り出すために工夫して努力する心が3つ目の創造する心であると本校では考えております。
▲お念仏の会
よく学び、自分を鍛えるのは自分だけのためではなく、周りの人とより良い生活を築くためです。そのような考えがこの3つの心に込められており、それが本校の目指す「利他共生」と「感恩奉仕」です。
仏教は人々を救う教えであり、昔からお坊様は人々の暮らしを良くするために尽力してきました。本学園創立者の長谷川良信先生は大正から昭和にかけて、社会福祉と教育に一生を捧げた僧侶でした。学祖の言葉に「彼のためではなく、彼とともに」があります。
まさしくこうした言葉が本校の児童を育てる願いにも繋がっています。本校は、そのような思いを持つ人を育てたいと考え、育てるために努力している学校だということをご理解いただければ幸いです。
実践を多く取り入れ、使える英語力を身につける、淑徳小学校の英語教育
▲オーストラリア海外体験研修旅行で文化交流をする様子
ここからは、淑徳小学校が創立当初から力を入れている国際教育についてお話を伺いました。
週2回の英語の授業に加え、多彩な実践プログラムを導入
御校のグローバル教育・英語教育についてお聞かせください。
本学園の校祖・輪島聞声先生は、「進みゆく時代のなかで、有為な人になれ」という言葉を残しています。時代に遅れることのないように、本校では1949年の創立当初から英語の授業を行っています。現在、1年生から週2時間、英語の授業があります。
本校の英語教育の中で特徴的なものとしては、4年生以上の希望者参加の海外体験研修旅行があります。これはオーストラリアへのホームステイとなっており、それに向けて、普段の授業にプラスして事前学習を行います。
また、英語体験を重要視しており、3年生では職業体験ができる「キッザニア」の英語プログラムに参加します。キッザニアの水曜日は約半数のアクティビティが英語で行われており、3年生全員で出かけます。4年生以上は年に1回、青海にある体験型英語学習施設「東京グローバルゲートウェイ」へ行きます。
▲「東京グローバルゲートウェイ」での英語体験学習の様子
先述の海外体験研修旅行は、事前指導をしっかりとしたいため、20名までの参加となっています。希望者全員が参加できるわけではないので、それをカバーする意味で、今年からの福島県の天栄村にある「ブリティッシュヒルズ」での英語体験を始めることにしました。
実際に英語を話すことによって、英語でのコミュニケーションの楽しさを実感してもらい、将来的には世界中のさまざまな人たちと交流できる人間を育成したいと思っています。
「英語は楽しい」の気持ちを育てることから始める英語教育
▲英語の授業の様子
御校のホームページの動画を拝見しましたが、児童のみなさんは本当にイキイキと、積極的に英語を話しておられますね。そういった積極性は、やはり1年生から週2時間の授業を行うことによって生まれてくるものなのでしょうか?
そうですね。1年生はネイティブスピーカーの先生が1人で担当しており、担任とともに歌って踊って、とにかく「英語は楽しい」の気持ちを育てることに重きを置いています。実は1~2人のサポートスタッフがおり、手伝いをしていますが、1年生では「英語のシャワー」を浴びさせることを重要視しているので、基本はネイティブの先生にお任せしています。
2年生からは1クラスを2人で指導していきます。ある程度できるようになったところで実践を行い、英語が通じる喜びと自信をつけていき、自己肯定感を高めていくことに心を配っております。
また、リスニング力を育てるために、毎日英語のDVDを聞きましょうという課題を出しています。それで耳が育っていると思います。
英語力はやはり学年ごとに育っていくのでしょうか?
そうですね。入学時点の英語力には差がありますが、英語が使える、通じた体験を積み重ねることによって、仲間と一緒に学習意欲を高めていく意味もあります。
6年生になると「個別最適化」を目指し、週に1回オンライン英会話を授業に取り入れています。これにより、児童一人ひとりの英語学習を効果的にサポートします。
日本語を学ぶオーストラリアの小学生たちと文化交流
▲オーストラリア海外体験研修旅行で文化交流をする様子
オーストラリア体験研修旅行に行った児童のみなさんは、帰国後に何か変化はありますか?
本校でオーストラリア体験研修旅行に参加した児童は、隣にある系列校の淑徳高等学校の留学コースに進学する割合が高くなってきています。
そのコースの特徴としては、海外に1年間留学しても、留年することなく、高校を3年で卒業できます。2024年3月に卒業した児童の数名も、留学コースに進みたいと言っていました。オーストラリア体験研修旅行をきっかけに海外の大学に進学した児童もいます。
オーストラリア体験研修旅行中の様子はいかがですか?
お世話になるオーストラリアの学校の児童は日本語を学んでおり、日本語の授業があります。本校の児童は、日本語の授業の時間に先生として日本の遊びを教えたり、相手の名前を聞いて漢字を当てはめて、千代紙に筆ペンで名前を書いてあげたり、いろいろな文化交流を行っています。
▲オーストラリア海外体験研修旅行で日本の遊びを教える様子
仏教の教えと福祉の精神を大切にする、淑徳小学校の感性・心を磨く教育
大乗仏教の教えに基づいた理念を持つ淑徳小学校では、豊かな感性や人間性を育てていくため、さまざまな取り組みを行っています。その詳細についてお話を伺いました。
仏教への理解を深め、優しい気持ちを育む
▲仏教行事のひとつ、み魂(たま)まつり
御校の感性・心を磨く教育についてお聞かせください。
本校は、仏教の教えをもとにしている学校ですので、年4回、花まつり、み魂(たま)まつり、成道会(じょうどうえ)、涅槃会(ねはんえ)という仏教行事があり、僧籍を持っている本校の教員が導師として実施します。ここで法話を聞いて、一人ひとりが、仏教への理解をより深める機会となっています。
先日のみ魂まつりの中で「人のため、みんなのために尽くす」というテーマで各委員会活動について話がありました。特に、4、5、6年生の児童たちが普段行っている委員会活動について取り上げられました。
彼らは朝早く登校したり、休み時間を削ったりして活動に取り組んでいます。自分の遊びたい気持ちを我慢して学校やみんなのために尽くすその姿勢は、とても素晴らしいことだとお話されました。
本校が大切にしている教え「利他共生」と「感恩奉仕」は、こういった身近な活動を通じて実践されています。このような話を聞いた児童たちは、自分たちの努力がみんなのためになっていると感じ、一層頑張る気持ちを持つきっかけとなりました。
宿泊行事などもあるのでしょうか?
はい。例えば6年生は新年度開始後すぐに奈良と京都へ修学旅行に行きます。この旅行では、浄土宗の総本山である知恩院を参拝します。知恩院には本校の校祖である輪島聞声先生のお墓があり、そこでのお参りも行います。
さらに、知恩院では般若心経を唱え、宗歌「月影」を歌います。小学生が般若心経を唱える姿は、観光客や参拝者に驚かれることが多いのですが、児童たちは自然に作法を身につけており、そういった姿も評価されています。
▲修学旅行は知恩院を参拝したときの様子
また、行事ではないのですが、本校の校長による特別授業も実施しています。校長先生が全学年に対して仏教の授業を行い、念仏の意味やお釈迦様、阿弥陀様についての話をします。
児童たちはこの特別授業を楽しみにしており、授業を受けた後は、優しい心を持ち、友だちに対しても優しくしようと思うようになります。
また、念仏を唱えると落ち着くという感想もあり、仏教の教えが身近に感じられる授業となっています。校長先生の話に夢中になっていると、自然と姿勢が良くなる児童もいます。このように、本校では仏教の教えを大切にし、児童たちが実践的に学ぶ機会を提供しています。
演劇鑑賞やプロの演奏会など体験を通して感性を磨く
そのほかの感性・心を磨く取り組みとしてはいかがでしょうか?
感性を磨くという意味では、いろいろな体験を取り入れており、例えば音楽発表会と鑑賞会を毎年交互に開催しています。2024年は音楽発表会の年で、初日は児童間での発表、その次の日は保護者向けに発表します。
また、毎年さまざまな劇団等を招いて演劇鑑賞会を開催しています。創立70周年を迎えた年は、記念事業として、劇場を貸し切って劇団四季の「ライオンキング」を全校児童や保護者で鑑賞しました。
音楽の授業では、プロの演奏家を招き、児童たちの目の前、手の届く距離で生演奏を聴かせることで、児童たちの音楽に対する興味関心を高めています。
その他の学習として、本学園はもともと社会福祉法人が源流の一つでもありますから、自分が社会で貢献できることを一人ひとりが自ら考えて実践する取り組みを行っています。
具体的には、「情報の時間」を中心に、福祉や環境問題、SDGsについて、調べ学習などを通して自分にできることを考えて発表したり、車椅子体験やパラリンピックスポーツ選手の講演を聞いたり、パラスポーツ体験などを通して障がい者への理解を深めたりしています。
実際に困っている人を見かけると声かけて手助けする児童もいますので、それは本校での学びの成果だと思っています。助けられた方から、感激のあまりお礼のお手紙をいただいたこともあります。
御校のホームページで「クラスの宝物プログラム」を拝見したのですが、こちらも素晴らしいと思いました。道徳教育の一環とされているのでしょうか?
それはクラスの目標とも関連してくるものです。自分たちの宝物は何なのか、自分たちのクラスの自慢できるところ、誇れるところは何なのかを児童一人ひとりが考え、さらにこのクラスの目指すところは何なのかをみんなで考えて、意見をまとめて掲示しています。年間を通してこの活動に取り組み、より良い学校生活や子どもたちの行動を伸ばしていくことを目指しています。
こうした数々の取り組みによって、本校においては一人ひとりの心が豊かに育まれており、みんなで協力して頑張ろうという気持ちが共有されていると考えています。
淑徳小学校からのメッセージ
▲取材に対応いただいた細川先生(左)と新井先生(右)
最後に御校に興味を持った保護者の方に向けてメッセージをお願いします。
昨年(2023年)、大乗淑徳学園ではコロナ禍における意識調査を行いました。その調査の小学校部門で、本校の児童・保護者は自己肯定感が高いということと、本校の心の教育の良さを、児童・保護者とも共感・実感できている割合が高いという結果が出ました。
私たちは3つの心(感謝する心・慈しみの心・創造する心)の育成と中学受験が両輪となって、人格形成に繋がっていくと考えています。学校と家庭が二人三脚で絆を深めながら、一人ひとりの児童を大切に想いながら教育に当たっています。
こうした本校の教育にご賛同いただき、ともに歩んでくださるご家庭とご縁をいただけたら非常にありがたいと思っております。
周りに感謝し、自分もその周りも共に幸せになるためによく学び、自らを鍛え、工夫して努力する、そんな考えができる人は、きっと幸せな人生を送ることができると思います。
夢を実現させることは簡単ではないですが、その困難や壁を乗り越えるために日々真剣に取り組んで、最後まで諦めずに努力を積み重ねることで自信を深め、子どもたちが大きく成長することを期待しています。
私どもは勉強だけに力を入れている学校だと思われがちなのですが、心の教育に力を入れておりますし、とても楽しい学校です。もし本校に興味をもっていただけたのであれば、ぜひ一度足を運び、学校の雰囲気を感じてみてください。
本日は貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。
淑徳小学校の進学実績
▲算数習熟度別クラス授業
淑徳小学校では、淑徳系列の中学校への進学をはじめ、本人やご家族の考えを尊重し、希望の中学進学を目指すことができます。受験対策の指導など、合格に向けたサポートも万全です。
本校系列中学校への合格の権利を持ったまま、外部の中学校を受験することができるので、安心して受験勉強に集中することができます。</p >
過去3年間の主な私立・国立中学校合格実績としては、共学校では、内選・東大選抜含む淑徳226名、東大選抜含む栄東69名、淑徳巣鴨58名、埼玉栄25名、大宮開成18名ほかとなっています。
男子校では、城北埼玉20名、立教新座19名、城北15名、巣鴨12名ほかとなっています。女子校では、淑徳与野特進36名、浦和明の星女子14名、学習院女子7名、大妻7名、豊島岡女子学園7名ほかとなっています。
■進路実績(淑徳小学校公式サイト)
https://www.es.shukutoku.ac.jp/educational_contents/examination_training/
淑徳小学校の在校生・卒業生・保護者の口コミ
▲理科実験の様子
ここからは、淑徳小学校の口コミを紹介します。実際に通学している在校生や卒業生や保護者の声をまとめました。
※在校生・卒業生のコメントは公式サイトより引用しています。
https://www.es.shukutoku.ac.jp/contents/wp-content/uploads/2024/04/57b6ec0cf1626ea784e7be5033fbd4cb.pdf
▲グラウンドや各種校内施設も充実している
淑徳小学校へのお問い合わせ
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