ぽてん読者の皆さまに個性豊かな学校を紹介するこの企画。今回は東京都八王子市にある中高一貫教育を行なう私立の共学校「工学院大学附属中学校・高等学校」をご紹介します。
同校は工学院大学八王子キャンパスの中にあるため、大学の施設や設備を利用したり、最先端の研究指導を受ける機会があります。また、先進的なICT教育を推進しており、恵まれた環境で中高6年間学ぶことができます。
今回は、入試広報部長の髙橋先生に、探究論文をメインとした探究学習や自慢の部活動について詳しくお話を伺いました。
この記事の目次
工学院大学附属中学校・高等学校の教育理念は「挑戦・創造・貢献」
▲自動車部がソーラーカーを手作りしたときの様子。強みを持つ理系分野ほか、校内にはさまざまな「挑戦」があふれている
初めに、工学院大学附属中学校・高等学校の教育理念について伺えますでしょうか。
工学院大学附属中学校・高等学校の教育理念は「挑戦・創造・貢献」です。何事にも挑戦して、自分の生き方を創造できる、そして社会に貢献できる人になろうという思いが込められています。
変化の激しいグローバル社会において求められることは、失敗を恐れずに挑戦し、周囲と協働しながら新しい価値を創造すること。そして、自分の夢に向かいながら社会に貢献することです。そのような人材を育むために、本校では先進的な学びの環境を用意しています。
工学院大学附属中学校・高等学校の探究学習は1年間かける探究論文がメイン
次に、工学院大学附属中学校・高等学校で行なっている探究学習について教えてください。
工学院大学附属中学校・高等学校では生徒の興味・関心を探究する学びについて力を入れており、さまざまな形で実践していますが、いちばん大きなものとしては、高校1年生から2年生の約1年間をかけて作成する探究論文が挙げられます。テーマは生徒が自由に設定し、主体的に調査・研究を行い、A4用紙20枚程度に自分の考えをまとめていきます。論文が完成した後は発表する機会も設けています。
とことんテーマを探究する取り組みが進路決定に大きな影響を及ぼしますし、高校3年時の総合型選抜や推薦入試で活用したり、さらに大学でも研究を深められることを期待しています。
生徒たちはどんなテーマを選ぶことが多いですか。
理系の生徒は「飛行機の飛行速度と空気抵抗」など具体的なテーマを取り上げ、実験を通じて自分なりに考察する傾向がある一方で、文系の生徒は「人間の生きづらさについて」など抽象的なテーマを選ぶことが多いです。
勉強やスポーツなど自分が一生懸命取り組んでいることについて、いかに効率よく進めることができるかというテーマを選ぶ生徒も多いですね。例えば、サッカーなら「どうすればゴールが決められるか」ですとか、「勉強に集中するにはどうすれば良いか」などです。
探究論文を通して生徒はどのように成長するのでしょうか。
まず、高校1年生や2年生が20枚もの論文を書くこと自体が素晴らしいと思いますね。指導の中では、どうすれば自分の考えを文章にできるかに焦点を当て、他論文などからの単純なコピー&ペーストを避けるよう言っています。
中学から探究学習の基礎を養う。成果は映像作品としてイベントで発表も
探究学習は高校のみで行なっているのでしょうか。
高校1年生から急に探究学習を行なうわけではなく、中学校から探究心を養う下地は作っています。
IBL(探究学習)の授業は中学1年生から実践しており、「中1探究プロジェクト」では、仲間と協力しながら課題を解決する想像力を育んでおり、2023年度は食をテーマに、食生活を支える技術や流通・サービスの現状と課題を把握するとともに、将来の食について考察しました。
また、探究活動の成果を映像作品としてまとめ、「映像祭」で発表する機会があります。作品の創造性やメッセージ性を相互に評価し、優秀作品を選考するので、各自、作品制作に力が入っています。
さらに、八王子の企業や団体を訪問し、現在の八王子地域を理解する「八王子プロジェクト」では、八王子独自の問題を探し、住みやすい街にするためのアイデアを考えたりしています。
具体的には、八王子の子どもの人口が減っているから、子どもにとって住みやすい街にしようということで、「森の中の自習室」を作ろうというアイデアが出ました。子どもたちには家庭以外にも安心して過ごせる場所や集中できる場所が必要だということで、このような案が出たようです。
自分の問題意識をひろげて、地元に貢献していきたいという思いが感じられますね。
自動車部など独自の部活動がある工学院大学附属中学校・高等学校
▲自動車部のエコカー(ガソリン車)。規定の燃料での走行距離を競うHONDAエコマイレッジチャレンジに毎年出場している
続いて、工学院大学附属中学校・高等学校の部活動についてお聞かせください。他校にはないユニークな部も多いと伺いました。
自動車部やデジタルクリエイター育成部などは、他校にはない部ではないかなと思います。
自動車部は工学院大学のソーラーカーチームと協働で電気自動車やソーラーカーを開発・制作し、レースに出場しています。レースは企業や大学・高専チームの出場が多いハイレベルなもので、中高生が参加するのはとても珍しいようです。自動車部に入りたいと本校に入学してくる生徒もいて、中学・高校でそれぞれ20人ほどの部員がいます。
デジタルクリエイター育成部はどのような活動をしているのでしょうか。
マインクラフト(※)や3Dモデリング・プログラミング、映像・音楽・デザイン制作などをしています。単にパソコンに親しむだけでなく、作品を作ることに主眼をおいています。本校では3Dプリンターやクリエイティブな制作に必要なPCソフトなどが揃っているので、充実した環境で活動に取り組むことができます。
(※)3Dの画面でプレイする箱庭型のゲームで、自由度が高く創造力・思考力などが養われるため教育現場でも活用されている。
他にはどんな部活動がございますか。
サイエンス部は部員が100人所属していて、本校でいちばん大所帯の部です。授業で学んだ理論を実際に実験して確認するなど、それぞれが興味のあることを探究しています。本校には天文台もあるので、観測会も実施しています。
▲天文台の天体望遠鏡。サイエンス部の天文班は天文写真についても学ぶ
他校では科学部などはどうしても少数派になりがちですが、本校ではそうならないのは特徴の一つと言えるでしょうね。サイエンス部は学会発表にもチャレンジしていて、将来の進路に役立つ部活動でもあります。
また、野球部は高校敷地内のグラウンドだけでなく、併設の工学院大学の全面人工芝グラウンドでも活動をしています。また、ICTを活用して部員のパフォーマンスを測定・解析し、そのデータを練習メニューに反映しています。チームへの貢献や仲間との助け合いを会得するだけでなく、個の力の成長も目指しています。
▲水泳部、ダンス部(高校硬式野球部応援時)、写真・旅行・鐡道部、ダンス部
工学院大学附属中学校・高等学校からのメッセージ
▲校長室は、ドアがオープンのときは誰でも入室可となっている。校長室で中学生がボードゲームをすることも
近年、工学院大学附属中学校・高等学校では第1志望での受験が増えているとの声も聞かれますが、どのような要因があるとお考えですか。
当校が特に力を入れているICT教育とグローバル教育が要因の一つかなと考えています。とりわけ英語教育に力を入れており、ケンブリッジ英検の認定校として、英語の授業は英語のみで教えています。これによりスピーキングとリスニングが鍛えられます。
他校でも英語力は重視していると思いますが、本校ではケンブリッジ英検のテキストを使用し、日本の検定教科書を使わない点が特徴です。
実践的な英語教育を行っており、共通テストのリスニングにも対応しています。当校の生徒は大学受験でも英語力が有利で、英検スコアを利用することもできます。これにより、英語が得意な生徒を育てています。
最後に、ぽてん読者にメッセージをお願いします。
工学院大学附属中学校・高等学校は「百聞は一見にしかず」の学校です。興味があれば、ぜひ見学にいらしてください。特に子どもたちには、来てみればその違いがわかります。私たちは、生徒自身が「ここに通いたい」と思える学校を目指しています。
イベントのスケジュールに関しては、本校の公式サイトに掲載しております。
■中学入試イベントカレンダー(工学院大学附属中学校・高等学校公式サイト)
https://www.js.kogakuin.ac.jp/admissions/junior/guidance.html
特に「夏休み自由研究教室」は、25のテーマで本校の教員・大学の先生と生徒たちが体験講座を行なっており、毎年大変好評です。小学生とその保護者に向けて提供しているもので、5教科全てを揃えています。子どもたちに新しい発見や興味を持ってもらうことを目的としており、在校生にも活躍の場を与え、教育効果を高めています。
自由研究の教室や学校説明会など、いろいろなイベントを開催していますので、ぜひ一度お越しください。
すごく楽しそうで、かつ学校の特徴や雰囲気がわかるようなイベントを多数開催されているんですね。興味を持った方は、ぜひ検討してみてください。本日はありがとうございました!
工学院大学附属中学校・高等学校の進学実績
▲隣接する工学院大学2号館は中高生の自習室として使用できる
工学院大学附属中学校・高等学校は、工学院大学の推薦権を留保して、他の国公立私立大学を自由に受験出来る制度があるので、他大学受験を推奨しています。2024年は医学部医学科に12名(海外大学を含む)、海外大学に20名、工学院大学に73名、国公立大学に8名、早慶上理ICUに12名が合格しています。
グローバルな進学指導や、補習から受験予備校レベルまで多彩な講座を開設している放課後学習支援が受験生の助けになったと思われます。
■進路実績(工学院大学附属中学校・高等学校公式サイト)
https://www.js.kogakuin.ac.jp/career/uni.html
工学院大学附属中学校・高等学校の在校生・卒業生・保護者の口コミ
▲毎年盛り上がる球技大会の様子
これらの口コミから、興味のあることに真剣に取り組むことができる環境ということが伺えます。
工学院大学附属中学校・高等学校へのお問い合わせ
運営 | 工学院大学附属中学・高等学校 |
---|---|
住所 | 東京都八王子市中野町2647-2 |
電話番号 | 042-628-4912 |
問い合わせ先 | https://www.js.kogakuin.ac.jp/ about/contact.html |
公式ページ | https://www.js.kogakuin.ac.jp/ |
※詳しくは公式ページでご確認ください