「他者理解の心」を育成する武蔵野中学校・高等学校のグローバル教育とは|中高一貫校

中学校受験に興味があるお子さん・保護者に向け、注目の学校を取り上げる本企画。この記事では、東京都北区にある「武蔵野中学校・高等学校」の教育実践を紹介します。

110年以上の歴史を持つ同校は、学校法人「武蔵野学院」が運営する中高一貫校(私立)です。短期大学・大学・大学院などもあり、一貫した人間教育を実施しています。「英語で学ぶ」をテーマにしたLTEの授業では、実践的な英語力が身につくほか、グループ学習やプレゼンスキルなども鍛えられます。

今回は、中学校の副主任かつ教務部長で、社会科を担当されている渡瀬先生にインタビュー取材し、同校の教育理念やグローバル教育、心の教育について詳しく教えていただきました。

武蔵野中学校・高等学校が重視するのは「他者理解の心」

武蔵野中学校・高等学校の生徒が談笑するようす

▲創立110周年を記念して制服が新しくなった。

編集部

最初に、武蔵野中学校・高等学校の教育理念をお聞かせください。

渡瀬先生

本校は校訓である「他者理解」に基づき、社会で自分の力を発揮できる人材育成を目指しています。相手の気持ち・状況・立場を思いやる「他者理解」の心を育てるためには、「人とのつながり」が欠かせません。

そのため、本校では「武蔵野メソッド」と銘打ち、授業の中にグループワークをたくさん取り入れているんです。他者の意見に耳を傾けながら、自分自身の考え・心情に迫ってほしいと思っています。

編集部

「他者理解」の心は大切ですが、短期間で身につけるのは少し難しいようにも感じます。生徒さんたちには、どのように指導されているのでしょうか?

渡瀬先生

ご指摘の通り、すぐに身につくものではありません。だからこそ、私たち教員が根気よく生徒たちに伝え続けることが大切だと思います。本校は素直な性格の生徒が多いので、教員の言葉を受け止めて「相手の話を最後まで聞こう」「友達のいいところを見つけよう」と努力しているようです。

武蔵野中学校・高等学校の教室に掲示されている校訓「他者理解」

▲すべての教室に掲示されている校訓「他者理解」。常に目に入ることで日々意識して過ごすことができる。

異文化に触れる!武蔵野中学校・高等学校のグローバル教育

「武蔵野中学校・高等学校」の教室風景

武蔵野中学校・高等学校は「グローバル教育」に力を入れ、生徒さんの視野を広げています。英語の授業や中学校・高等学校の研修を中心に、同校のグローバル教育に迫ってみましょう。

ネイティブ教員による「LTE」で、使える英語力を鍛える

「武蔵野中学校・高等学校」のE・Room入口

▲LTEの授業を行う「E・Room」。この教室に入ったらすべて英語!という気持ちの切り替えにもなる。

編集部

中学校の英語では、どのような授業をしているのでしょうか?

渡瀬先生

中学校では1年生から全学年で、週に6時間の「LTE(LearningThrough English)」を実施しています。LTEはネイティブ教員が担当し、オールイングリッシュで授業が進められます。

武蔵野中学校のLTEの授業風景

▲LTEの授業風景

教員が一方的に話す授業ではなく、英語を使ったグループワーク・プレゼンといった生徒たちが関わり合う活動が中心です。例えば1年生のグループワークでは「家族について紹介してください」「住んでいる地域を説明してみましょう」をテーマに、英語を話す・聞く力を育てます。生徒にとって身近な内容をテーマにするので、「何を話せばいいのか分からない」という生徒も少ないようです。

「武蔵野中学校・高等学校」の英語のワークシート

▲英語・日本語の両方が記載されたワークシート

編集部

オールイングリッシュの授業を受けるには、ある程度の英語力が必要な気もします。実際のところ、英語力は関係するのでしょうか?

渡瀬先生

入学時点での英語力はそれほど関係なく、「英語があまり得意ではない」という生徒も入学してきますね。ただ、LTEの授業はクラスごとに実施するため、英語が得意な生徒から学べる環境です。ネイティブ教員の指示を理解できない生徒に、英語が得意な生徒が「今、こういうことを話していたよ」と通訳する姿も見られます。英語力の高い友達の発音をまねしながら、会話力を鍛えていくケースもあるようです。

LTEをきっかけに英語の楽しさに気付き、「もっと英語力を高めたい」と話す生徒も少なくありません。ほぼ毎日、ネイティブの英語に触れているので、特に「リスニング力」がかなり鍛えられます。

編集部

武蔵野中学校・高等学校は、高校3年生での英検準2級の取得率が70%を超えているそうですね。英検取得率の高さからも、中学1年生からのLTEが英語の学習意欲につながっていることが分かります。

武蔵野中学校・高等学校に掲示されている英検の認定証書

▲校内には、英検の認定証書がずらり。

国内での「クロス・カルチュラル・プログラム」で、異文化に触れる

武蔵野中学校・高等学校が実施しているクロス・カルチュラル・プログラムで訪れた沖縄の海と生徒

▲クロス・カルチュラル・プログラムで沖縄を訪れたときの様子

編集部

校内で学んだ英語を活かし、ネイティブの方々と交流する機会はあるのでしょうか?

渡瀬先生

もちろんです。中学3年生の「クロス・カルチュラル・プログラム」では、外国の方々と英語でコミュニケーションを取る機会を設けています。修学旅行のような位置づけで、プログラムの内容は年度ごとに異なります。私は中学3年生の担任(2024年度)をしているので、6月に生徒たちと一緒に沖縄県の本島・宮古島を訪れました。

沖縄本島では現地に住んでいる外国人の方々に、オープンしたばかりの「DMMかりゆし水族館」「ウミカジテラス」などを案内してもらいました。コミュニケーションは全て英語なので、生徒たちにとっては授業で培ったリスニング力・会話力を試す機会になったようです。

編集部

授業以外の場面で、外国の方々と会話をする経験は、生徒さんの自信にもつながるでしょうね。一方の宮古島では、どのようなプログラムを体験したのでしょうか?

渡瀬先生

宮古島では、生徒たちが住む関東エリアとは異なる「その地域ならではの文化」に触れてもらいました。具体的には、宮古島に住んでいる日本人のお宅(5〜6家庭ほど)に4〜5人ずつ宿泊させてもらったんです。滞在中には、ゴーヤ・オクラの収穫を手伝ったり、漁船に乗って魚を捕獲する様子を見学したりと、現地の生活を体験しました。

グローバルが意味する「世界中」には、当然ながら日本も含まれます。外国ほどではないものの、日本にも地域ごとの方言・文化などがありますよね。まずは国内の文化の違いに気付き、他者を理解する心を育てていきたいと思っています。

海外留学・研修で視野を広げ、人間的な成長ができる

武蔵野中学校・高等学校の海外での語学研修

▲マルタやセブ島での語学研修。英語力の成長だけでなく、人間的にも視野が広がっていく。

編集部

海外で、ネイティブの方々と交流する機会はありますか?

渡瀬先生

高校1年生の海外留学は、ニュージーランド(約3カ月)か、地中海上に位置するマルタ島(約2週間)のいずれかを選択できます。この海外留学は、武蔵野中学校から内部進学で高等学校に進んだ「インテンシブステージ」の生徒が対象です。

例えばニュージーランドの留学では、ホームステイをしながら現地の学校に登校します。基本的に1人ずつホストファミリーのお宅に泊まるため、「自分で考えてみて、分からないところは相談する」といった精神的な自立にもつながるんです。日本と異なる文化に触れ、視野を広げて帰国する生徒が多いです。

本校としては、英語がペラペラに話せるというよりも、親元を離れた生活や、視野の広がりによる人間的な成長を重視しています。

武蔵野中学校・高等学校のニュージーランド3ヶ月留学でのホストファミリーと生徒の写真

▲ニュージーランドの3ヶ月留学では、ホームステイ先のホストファミリーと絆を深めた。

編集部

海外留学を機に、人間的な成長を感じた生徒さんのエピソードを教えていただけますか?

渡瀬先生

2024年度の参加者は4人ほどだったんですが、ある男子生徒の成長には驚きましたね。彼はどちらかというと口数の少ないタイプで、意思表示が苦手だったんです。ただ、ニュージーランドの授業を受けるうちに、自分の考え・意見をしっかりと話せるようになったと聞きました。

友達に「せっかく海外に来たのだから、たくさん授業を受けよう」と声をかけ、ネイティブの高校生と一緒に授業に参加したそうです。帰国後、たくましい顔つきになった彼を見て、意識そのものを変える「海外留学の力」を感じました。

編集部

ここまでインテンシブステージの海外留学について伺ってきましたが、高校から入学した生徒さんが海外に出向く機会はあるのでしょうか?

渡瀬先生

もちろんです。高校から入学した生徒は、カナダまたはセブ島(フィリピン)での語学研修(約2週間)に参加できます。

武蔵野中学校・高等学校のカナダ海外研修

「英検2級が必要」のような参加条件はなく、希望した全員がいずれかの研修を体験することが可能です。もちろんインテンシブステージの生徒も対象ですが、せっかくなので枠が限られた海外留学に挑戦してほしいと思っています。

「武蔵野中学校・高等学校」のマスコットキャラクター

▲学校公式キャラクターは、グローバル教育・英語教育に力を入れる同校ならではの「ムサシノ・イングリッス」

武蔵野中学校・高等学校の「つながり」を活かした心の教育

「武蔵野中学校・高等学校」の廊下風景

武蔵野中学校・高等学校のもうひとつの柱は、先生や先輩・後輩のつながりを活かした「心の教育」です。どのような取り組みがあるのか、詳しく教えていただきましょう。

あいさつ・返事などの基本を重視!社会で活躍する土台を築く

「武蔵野中学校・高等学校」のあいさつを呼びかけるポスター

編集部

武蔵野中学校では、生徒さんの心の教育に力を入れているそうですね。先生方が生徒さんを指導する際、どのような点を重視されていますか?

渡瀬先生

中学校では、あいさつや返事、時間を守るといった「基本的なマナー・ルール」をきちんと指導しています。「当たり前のことではないか」と思う方もいるかもしれませんが、「当たり前」を続けるのは想像以上に大変なんです。実際、社会で信用を勝ち取っていくのは、基本的なマナー・ルールが身についた人が多いですよね。

編集部

確かに、就職試験でもあいさつ・返事ができるか否かはチェックされると聞きます。基本的なマナー・ルール以外に、生徒さんたちに身につけてほしい力はありますか?

渡瀬先生

人前で自分を堂々と表現できるような、「発信力」を身につけてほしいと思っています。本校では、授業にグループ活動やプレゼンを取り入れ、自分の考えを分かりやすく説明する力を鍛えています。

自分を表現する力は、大学入試や就職試験の面接・グループ活動にも活かせるんですよ。生徒たちの10年後、20年後を見据え、人間としての基本を丁寧に教えているところです。

宿泊行事を通して、「支え合いの心」を学ぶ

武蔵野中学校・高等学校で行う宿泊行事での一コマ

編集部

ここまで先生方の指導について伺ってきましたが、先輩から後輩へと受け継がれていくものもありますよね。行事などで、先輩・後輩が関わる機会はあるのでしょうか?

渡瀬先生

もちろんです。中学校は1学年が約30人と少人数なので、年に2回の宿泊行事は3学年合同で実施します。毎年4月に行う「オリエンテーション合宿」は、学校生活に慣れるための行事です。11月には「秋期林間学校」と称し、職業体験などに挑戦します。1〜3年生が入るように部屋を割り当てるため、先輩・後輩がやり取りをする機会が多いです。

「1年生は学校生活に慣れる」「3年生はリーダーシップを発揮する」「2年生は、1年生と3年生の橋渡し役になる」と、それぞれの学年に役割があります。3年生はまとめ役なので苦労も多く、「部屋の使い方が1年生にうまく伝わらない」と弱音を吐いていました。ただ、途中で投げ出さずに「伝え方を変えてみよう」と話し合って、最後までやり遂げるんですね。

グループで英語のゲームをした際には、ネイティブ教員の指示を理解できずにいる1年生に「こうすればいいよ」とフォローする姿も見られました。1〜2年生は彼らなりに、先輩を困らせないように努力しているようです。3学年合同の宿泊行事は、生徒たちが「支え合いの心」を学ぶ機会になっています。

中高合同の運動会で、全力で取り組む喜びを体験

武蔵野中学校・高等学校での体育祭

▲体育祭で笑顔でパフォーマンスする生徒たち

編集部

ここまで中学校独自の取り組みを伺ってきましたが、高校生と関わる機会はあるのでしょうか?

渡瀬先生

毎年9月に実施する「体育祭」は、中学校・高等学校合同の行事です。「みんなでやるから高いところへ行ける」をスローガンに、運動が得意・不得意に関係なく、みんなで取り組むことを重視します。中学1年生と高校1年生がチームを組み、ときには泥まみれになりながら全力で競技をします。高校生の活躍を見て、「自分もこんな風になりたい」と憧れを抱く中学生も少なくありません。

名物の競技は、100人ほど(中学生・高校生の合計)の代表選手による「玉入れ」です。玉入れの高さは2〜3メートルほどが一般的ですが、本校の玉入れは6〜7メートルほどの「玉入れマシン」を使います。このマシンは、2,000~3,000個のカラーボールが入るほどの大きさになっています。

マシンにはラインが記されており、ラインを超えるだけの玉を入れると勝利となります。スタートの合図に合わせて、選手たちが約1万個のカラーボールを投げ入れる様子は見応えがありますよ。

編集部

6〜7メートルは2階建ての家の高さに相当するので、難しい分、会場も盛り上がるでしょうね。ここまで代表の生徒が対象の競技を伺ってきましたが、全ての中学生・高校生が参加する行事はあるのでしょうか?

渡瀬先生

もちろん、ありますよ。「応援ダンス」は、中学校・高等学校の全生徒が参加できます。300人ほどが一緒に踊るため、生徒同士の団結力が問われるんです。代表の生徒が踊り方・隊形などを考え、全校競技にふさわしいダンスに仕上げます。

国立大学にも合格!武蔵野中学校・高等学校の進学実績

「武蔵野中学校・高等学校」の外観

編集部

武蔵野高等学校の卒業生たちは、どのような進路を選択するのでしょうか?

渡瀬先生

高校3年生のほとんどは、4年制大学への進学を希望しますね。グループワークやプレゼンで発信力が鍛えられるため、一般入試よりも推薦入試・総合選抜型といった自己表現を重視する試験で結果を出す生徒が多いです。自身の強みはもちろん、海外体験で感じたことを自分の言葉で話せる傾向にあるので、面接でも高く評価されるようです。

武蔵野中学校・高等学校で進路について相談中の先生と生徒

2023年度には、卓球部の活躍と成績の高さが評価され、国立の筑波大学に進学した生徒もいます。同じ卓球部員では、自己推薦で早稲田大学に入学したケースもありましたね。クラブ活動・勉強の両立に挑み、日本体育大学・順天堂大学・東洋大学といった名の知れた大学に合格する生徒も少なくありません。

公式:武蔵野中学校・高等学校「合格実績」

武蔵野中学校・高等学校からのメッセージ

「武蔵野中学校・高等学校」の渡瀬先生

▲取材に対応してくださった渡瀬先生は、2010年度から武蔵野中学校で生徒たちの成長を見守っている

編集部

武蔵野中学校・高等学校に興味があるお子さん・保護者に向け、メッセージをお願いします。

渡瀬先生

本校は「人とのつながり」を大切に、社会人に求められる協調性・自己表現力などを育てる学校です。学校は家庭の次に長く過ごす場所なので、お子さんが「ここに通ってみたい」と選んだ学校に進学してほしいと思います。

その上で本校に興味を持ってくださる方は、ぜひ学校説明会にお越しください。その他にも「在校生と巡る文化祭体験ツアー」といった企画も実施する予定です。ご自身の目で学校の様子や生徒たちの雰囲気を確認し、お子さんとの相性を判断していただけると幸いです。

公式:武蔵野中学校・高等学校「2024年度 学校説明会・体験イベント日程」

編集部

少人数制の御校は、先生や先輩・後輩、仲間と関わる機会が多い分、コミュニケーション力も鍛えられることでしょう。

本日は、貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました!

武蔵野中学校・高等学校の保護者からの口コミ

「武蔵野中学校・高等学校」のカフェテリア

▲券売機で好きな食事を購入できる「カフェテリア」は、生徒たちから人気のスポット

最後に、武蔵野中学校・高等学校の保護者から寄せられた口コミを紹介します。

1学年が30人ほどと少人数のため、学習面・生活面ともに手厚く指導してもらえる

指導方針がはっきりとした学校で、先生方の指導にも満足している

クラブ活動が活発で、水泳・卓球・柔道などの特待生で入学してくる生徒も多い

口コミからも、先生たちが1人ひとりの生徒を丁寧に見守る様子が伝わってきます。そのほか、「体育館が2つあり、温水プールもある。図書館の蔵書数も多い」と、施設面を評価する声も見られました。

「武蔵野中学校・高等学校」の設備

▲都内の学校では珍しいプールも。広い校庭(右上)とは別にグラウンドもあり環境が整っていることがわかる。校内には部活の実績も多数。

武蔵野中学校・高等学校へのお問い合わせ

運営 武蔵野学院
住所 東京都北区西ヶ原4丁目56-20
電話番号 03-3910-0151
公式サイト https://www.musashino.ac.jp/mjhs/

※詳しくは公式ページでご確認ください