全員が中学受験を目指す「甲子園学院小学校」の高い学力を育む環境とは|私立

特色ある教育に取り組む“注目の学校”を特集するこの企画。今回は兵庫県西宮市にある私立小学校(共学校)「甲子園学院小学校」を紹介します。

甲子園学院小学校は、学校法人甲子園学院によって1951年に設立された私立小学校です。全員が中学受験をすることを前提に、高い学力を育む教育を実践しているのが特徴です。特に算数、理科、国語の一部の授業では習熟度別学習を取り入れ、児童一人ひとりの理解度に応じたきめ細かな学習指導を行っています。

学力向上に力点を置く一方で、甲子園学院小学校は人間的な成長につながる心の教育も大切にしています。特に縦割り教育を重視しており、上級生と下級生の温かい交流を通じて学校全体に温かい家族のような関係性が育まれています。

今回は同校校長の中道先生に、甲子園学院小学校の教育方針や理数教育の特徴、児童に“貢献”の心を育む縦割り教育の魅力などについて詳しくお話を伺いました。

未来に輝く子どもを育む「甲子園学院小学校」

甲子園学院小学校の校舎外観

編集部

最初に、御校の建学の精神を教えてください。

中道校長

甲子園学院小学校は、学校法人甲子園学院の創立者である校祖・久米長八先生が唱えた「黽勉(びんべん)努力・和衷協同・至誠一貫」を建学の精神、校訓に掲げています。

「黽勉努力」とは自らの意思に従って勉学に勤しむことを意味する言葉で、小学生に向けては「自分の不得意なところ、苦手なところを努力して伸ばしていきましょう」と教えています。「和衷協同」は心を同じくしてともに力を合わせること、「至誠一貫」は途中で諦めることなく最後までやり通すことを意味する言葉です。

この3つの校訓は教員間の指導の拠り所でもあり、本校の教員は皆、常に意識して児童への日頃の教育にあたっています。児童たちにも浸透させていくため、毎朝クラスの全員で「黽勉努力・和衷協同・至誠一貫」を唱えてから1日をスタートさせています。実際、子どもたち自身も苦手なことに向き合ってしっかりと克服する姿勢を見せてくれていますよ。

編集部

この校訓のもと、どのような教育を進められているのでしょうか。

中道校長

本校の教育の目標は「未来に輝く子ども」を育成していくことです。これからの時代は、一層予測困難なものとなっていくことが想定されます。そんな未来に輝く子どもを育んでいくためには、自ら課題を見つけて考え、行動する力をつけることが必要です。

児童からは「何で勉強をしなくてはいけないのか」という疑問が出ることもありますが、「すべての学びが社会貢献につながるものである」ということを伝えるようにしています。本校の児童たちには、将来さまざまな形で学びを活かして社会貢献し、この国の未来を支えていくような人材になっていってほしいと考えています。

全員中学受験を前提に、学校をあげて児童の勉強をサポート

甲子園学院小学校の放課後勉強会の様子

▲放課後勉強会の様子

編集部

御校はほぼ全員が中学受験をされるとのことですが、中学受験に向けて学力を高めていくための取り組みとして特徴的なものはありますか?

中道校長

本校では学校全体で中学受験に向き合っており、算数や一部国語、理科の授業での習熟度別学習や演習形式の授業など中学受験を前提としたカリキュラムを実践しています。加えて放課後には「勉強会」を実施し、希望者に向けて宿題や個別課題などの指導にあたっているのが特徴です。児童はうまく放課後の時間を使いながら、積極的に勉強に取り組んでいます。

この勉強会は夏休みの午前中にも毎日実施しています。もちろん強制ではなく自主登校ではありますが、7月中は低学年の児童の半数近くが学校に来ていますね。学校で夏休みの宿題をしたり、高学年の児童は午後からの学習塾の夏期講習に向けた予習をしたりと、児童それぞれにこの勉強会をうまく活用しています。

編集部

夏休み中であっても、教員に質問などもできるのでしょうか。

中道校長

はい。夏休み中の勉強会も教員がサポートしながら、普段の授業と同じようにチャイムを鳴らし、休憩時間と勉強をする時間のメリハリをつけて取り組んでもらっています。

5・6年合同の習熟度別の授業で算数の力を高める

甲子園学院小学校の算数の授業の様子

編集部

続いて理数教育のテーマについて伺います。先ほど算数や理科で習熟度別学習を取り入れているとのお話がありましたが、どのような授業を実施されているのでしょうか。

中道校長

算数では全国的にも珍しい5年生と6年生を一体とした習熟度別学習を実施しています。5、6年生といっても、6年生の入試は1月から始まるため、実際は4年生の3学期から5年生と組み合わせたプログラムがスタートします。

具体的には、4年生の3学期から6月くらいまでの間に5年生の算数の内容を一通り完了させ、7月から12月にかけて6年生の算数の内容を完了させるという流れです。つまり5年生の12月までに6年生までの内容を一通り終えて、1月以降は再び5年生、6年生の内容を復習するという、2年間で5、6年生の内容を2度学習できる内容になっています。

この5・6年生の合同クラスは、5・6年生合わせて40名弱の人数を習熟度に応じてSA、A、B、Cの4クラスに分けています。どのクラスでも同じ単元を行っていますが、理解度に応じて内容の深度を変えています。トップクラスのSAは私が授業を行っており、「校長自ら授業する学校は珍しい」と言っていただくことも多いんですよ。毎月クラス替えテストを行っているため、上のクラスに上がっていくことも可能です。

甲子園学院小学校校長の中道先生が授業を行う様子

▲トップクラスのSAでは中道先生直々の授業が受けられる

編集部

「校長先生から教えてもらいたい」と、SAクラスを目指して頑張るお子様も多いのではないでしょうか。

中道校長

実はそうなんです。昔から私は少し難しい問題を出してクリアした児童に「金シール」という金色のシールをあげているのですが、それが児童たちの間で「金シール問題」という名前で有名になっているらしく、金シールを集めるために頑張る児童も多いんですよ。問題集の裏に貼って「100枚溜まった」と喜んでいる児童もいます(笑)。

難しい問題だけでなく、簡単な問題であっても100点を取れた児童に金シールをあげるなど、子どもたちが楽しく算数に取り組めるよう工夫しています。

編集部

習熟度別のきめ細かな学習サポートに加え、クラス替えテストや金シールなど、学習のモチベーションも意識されているんですね。実際に算数が得意な児童も多いのでしょうか。

中道校長

本校では毎年校内模擬テストを実施しているのですが、私がこの学校に来て約40年、算数の偏差値は悪くても55、良いときで60くらいをずっと保っています。やはりこの習熟度別学習の仕組みがあることで、算数を好きになって得意になる児童が多いのではないかと思っています。

理科の授業では、演習に加えて「実験」を重視

甲子園学院小学校の理科の実験の様子

甲子園学院小学校の理科の実験の様子

甲子園学院小学校の理科の実験の様子

▲児童の理科への興味・関心を深め、応用力を伸ばす理科の実験(スクロールで写真がご覧いただけます→)

編集部

理数教育に関して、理科の取り組みはいかがでしょうか。

中道校長

理科の授業も高学年から学年ごとにA、Bの2クラスに分けて習熟度別学習を取り入れています。また通常のカリキュラムでは理科の授業は週3時間なのですが、本校はそれを週4時間に増やし、2時間実験、2時間演習という形で実施しています。学習塾では演習中心の授業が基本のため、実験をしっかりできるのは学校ならではの利点ですね。

さまざまな理科実験を行っていますが、特に児童に人気なのは砂山を使った火山の噴火実験です。化学薬品を使うことで大人になった気分も味わえるようで、楽しく実験に取り組んでいます。

編集部

演習だけでなく実験にも力を入れているのにはどのような意図がありますか?

中道校長

楽しく実験をすることで、児童の理科への興味・関心を深めることができると考えています。さらに実験で経験したことを土台に、演習への応用力を伸ばすことも狙いです。知識を身につけて「理論的にこういう結果になる」と分かっていても、実験をしたら理想の結果と違ってしまうことは多々ありますよね。その原因や改善策を考えることが、実感を伴った深い理解につながっていくと考えています。

甲子園学院小学校の生活科の授業の様子

▲こちらは生活科の授業の一コマ。ここでも児童が理解しやすい、目で見てわかる授業を実施。

「全校暗算」で計算力・集中力を底上げ

甲子園学院小学校の全校暗算の様子

▲全校暗算に取り組む児童の様子

編集部

その他にも、特徴的な理数教育の特徴があれば教えてください。

中道校長

本校ならではのユニークな取り組みとして、「全校暗算」を実施しています。全校暗算は隔週月曜日に、校内放送で流す10問の暗算問題に全校児童が取り組むというものです。静寂の中で暗算問題を解くことだけに集中するため、計算力だけでなく集中力を培う機会にもなっています。

1年生から6年生まで同じ問題に挑むことになるため、目指すべき正答率は学年に応じて分けています。1年生は2問正解を水準としていますが、絶対に3番、4番にチャレンジする児童が出てくるんです。そういうチャレンジ精神を育むことも、この全校暗算の狙いです。

縦割り教育で異年齢交流を促進し、“甲子園ファミリー”の関係性を築く

甲子園学院小学校の林間学校の様子

▲林間学校での異年齢交流の様子

編集部

続いて感性、心を磨く教育のテーマに移ります。甲子園学院小学校では児童の皆さんの心の教育としてどういった点を大切にされていますか?

中道校長

本校は全校児童が100名弱の小規模校ということもあり、児童も教員も、保護者の方も含め「甲子園ファミリー」として家族のような関係性を築いていこう、という考えを持っています。そのため学校生活の中では、縦割り教育での異年齢の関わりを非常に重視しています。その縦割り教育の中心となる行事が、毎年5月に2泊3日で実施している林間学校です。林間学校は学校全体を「2年生・5年生」「1年生・3年生・4年生・6年生」の大きく2グループに分けて実施します。

2年生と5年生のグループの行き先は和歌山県の高野山の「奥之院」です。奥之院には甲子園学院の関係物故者の霊を祀った慰霊塔があるため、そこに参拝するというのが大きな目的の1つです。参拝後は奈良県の天川村の洞川(どろがわ)温泉で2泊3日の宿泊体験を行います。林間学校中は食事や寝るときも、すべての活動で5年生が2年生のお世話をします。

2年生・5年生以外のもう一方のグループでは、兵庫県の丹波篠山市の「ユニトピアささやま」という施設で2泊3日のキャンプをします。こちらのグループでは6年生が1年・3年・4年生のお世話をするんです。6年生の1学年で3学年を見るのは大変なのですが、最高学年ということで5年生よりも一歩進んだ縦割り教育を体験してもらっています。

甲子園学院小学校の林間学校の様子

▲甲子園学院小学校の縦割り教育の中核となる林間学校

編集部

林間学校を終えられた後、児童の皆さんに感じる変化はありますか?

中道校長

1年生は入学して1か月と早い時期に林間学校に行くことになるため、子どもたちも保護者の方も不安そうにしているのですが、親元を離れて2泊3日の林間学校をやりきって帰ってきた1年生は幼稚園生から小学生の顔になっています。保護者の方からも「立派になって帰ってきたね」という言葉をよく聞きますよ。

5年生も、初めて自分が年下の子を導く立場として参加するため、高学年としての自覚が生まれる機会になっています。林間学校後は学習の姿勢も落ち着いているのが見てとれるため、この経験が人間的な成長につながっているのだなと実感しますね。

甲子園学院小学校の授業中の様子

▲林間学校の経験が、高学年としての自覚や学習姿勢にもつながる

中道校長

3、4年生の中にも、6年生の姿を見て「皆の役に立ちたい」「自分もああいうリーダーになりたい」という思いが芽生えているようです。その証拠に、5、6年生になって林間学校の班長に立候補する児童がとても多いんですよ。教員側も、5、6年生の間にできるだけ皆が班長を経験できるよう工夫しています。

編集部

林間学校を経て学年を超えた仲の深まりも感じられますか?

中道校長

もちろんです。本校では林間学校以外にも、毎日の昼食の時間を全校児童で食べるなど、折に触れて異年齢の交流ができるような工夫をしているのですが、林間学校後はますます仲が深まっているように感じます。

特に1年生6年生の絆が強くなり、運動場で一緒にドッジボールなどで遊ぶようになるんです。運動場に行くときにも6年生が1年生の教室に迎えに行く光景を目にすることができますよ。6年生がボールを投げる際も、1年生の子が取れるように強さを気遣っていて、優しい心が育っているなと感じます。

昼休みの様子

▲昼休みのドッジボールを行う6年生と1年生の児童

編集部

縦割り教育を実施されている中で、印象に残った児童のエピソードがあれば教えてください。

中道校長

ある1年生の男子児童で、入学してすぐの時期なかなか学校に足が向かず、しばらく保護者の方と一緒に学校の門まで登校している子がいました。そんなとき、同じ方角から来ている6年生が電車の中でその児童の姿に気づき、学校の最寄り駅についたときに「僕が連れて行ってあげます」と申し出てくれたんです。

駅からしばらく一緒に通っている内に、1年生の子もその6年生のお兄ちゃんにすごく心を許すようになりました。そんな姿をしばらく見守っていた保護者の方も安心して、次第に付き添わなくても学校に通えるようになりました。その1年生の子はとても元気に登校できるようになり、それ以降もずっと6年生のお兄ちゃんを頼りにしています。

この話は、偶然その姿を見ていた他の保護者からの報告で分かったことなんです。その方は「甲子園学院って、とても微笑ましい関係性があるんですね」と言ってくださいました。

林間学校より前の、まだ1年生と6年生の交流機会がそれほど多くない時期にも関わらず、6年生として自発的に行動する児童がいることが、私もとても嬉しかったです。最初にお話した通り、すべての学びは「貢献」につながっていると日頃から児童に伝えているため、児童に貢献の心が育っているのだなと実感しました。

甲子園学院小学校からのメッセージ

甲子園学院小学校校長の中道先生

▲インタビューにご対応いただいた校長の中道先生

編集部

最後に、甲子園学院小学校に興味を持ったお子様や保護者の方に向けて、メッセージをお願いします。

中道校長

少人数の学校だからこそ「甲子園ファミリー」として1つの家族のような雰囲気があるのが本校ならではの魅力です。保護者の方からも、よく「家族的な学校」だと言っていただきます。私自身、校長という立場ではありますが、あまり校長室にいることはなく、よく児童とも保護者の方とも話をしています。本校の教育に魅力を感じる方は、ぜひ我々家族の一員になっていただきたいと思います!

編集部

中道先生、本日は貴重なお話をお聞かせいただきありがとうございます!

甲子園学院小学校の進学実績

甲子園学院小学校の英語の授業

甲子園学院小学校では中学受験に向け、日々の授業に加えて、年間11回の模擬試験やアクティブラーニングに対応するためのICT環境の整備、教育相談などきめ細かなサポート体制を整備しています。

過去5年の進学実績をみると、県内では灘中学校、甲陽学院中学校、六甲学院中学校など最難関校への進学者を輩出しているのが特徴です。同志社中学校、洛南高等学校附属中学校、四天王寺中学校、西大和学園中学校、東大寺学園中学校など、関西圏の難関中学校にも数多くの合格者を出しています。また、開成中学校など首都圏の人気校への合格実績も見られます。

■甲子園学院小学校の進学実績(公式サイト)
https://www.koshiengakuin-e.ed.jp/admission/achievement.html

甲子園学院小学校の保護者からの口コミ

甲子園学院小学校の「6年生を送る会」の様子

甲子園学院小学校の「音読発表」の様子

甲子園学院小学校の学習発表会の様子

スクロールで写真がご覧いただけます→

ここでは、甲子園学院小学校に通う児童の保護者の方からの口コミを一部抜粋して紹介します。

中学受験、特に難関校の受験を考える上で最高の環境がある。習熟度別の授業、受験問題レベルの模試など、公立校ではなかなかできないと思う。何より全員が中学受験をすることを前提としているため、受験に集中できる環境があるのが嬉しい。

先生方は本当に家族のように、厳しさと優しさを持って接してくれる。伝統を大切にしつつ、新しい考え方もどんどん取り入れた教育指導も魅力。

縦割りの活動が多く、普段から他の学年とも遊んでいる。とてもアットホームな学校。

林間学校がとても楽しいようで、その様子を見ていると親としても嬉しい。ただ楽しいだけでなく他の学年と触れ合うことで、子どもにとって大きな成長につながっている。

難関校への中学受験を前提とした学校として、学力を高めていく上で素晴らしい学習環境があることが口コミから伝わってきました。また他の口コミでは「林間学校は普段勉強を頑張る子どもにとって“ご褒美”」という声もあり、児童にとっても楽しい行事となっているようです。

インタビュー中にあったように、1つの家族のような甲子園学院小学校ならではの雰囲気に魅力を感じている声も多く聞かれました。

甲子園学院小学校へのお問い合わせ

甲子園学院小学校の運動場

運営 学校法人甲子園学院
住所 兵庫県西宮市天道町10-15
電話番号 0798-67-2366
問い合わせ先 https://www.koshiengakuin-e.ed.jp/news/?detail=500
公式ページ https://www.koshiengakuin-e.ed.jp/

※詳しくは公式ページでご確認ください