追手門学院中・高等学校のアートを通して感性を磨く探究学習とは

ぽてんをご覧の皆様に、注目の学校をご紹介する本企画。今回取材したのは、大阪府茨木市にある私立の共学校「追手門学院中・高等学校」です。

1888年(明治21年)の創立で、幼稚園、小中高、大学がある総合学園の追手門学院。中学校と高等学校は、2019年には大学キャンパスとともに、現在の場所に移転しました。同校には探究科という独自の科目があり、自身を見つめたり、社会課題を考えたりしながら、主体性・社会性を身につけ、社会に貢献する人材に成長することを目指しています。

今回はその探究科での教員を務める佐藤先生に、教育理念や探究科のカリキュラムの特色などについてお話を伺いました。

追手門学院中・高等学校の主体性、社会性を育む教育理念

インタビューに応じてくださった佐藤先生

▲インタビューに応じてくださった佐藤先生

編集部

まず、追手門学院中・高等学校の教育理念について教えてください。

佐藤先生

本校の教育理念は、「独立自彊」と「社会有為」の二つを掲げています。

「独立自彊」は自分の軸を持つことを意味しています。つまり、自分の考えをしっかりと持ち、個性を大切にし、自らの成長に向かって日々努力する、ということです。「自彊」は「自強」と同義であり、自らをつとめ、励むという意味です。

一方「社会有為」は字の通り、社会に貢献するというものです。自主的、自律的な精神と確かな個性を持ち、同時にまた、他者や社会のことをきちんと考え、豊かな社会性を持った人間を育てることを、本校は目指しています。

編集部

教育理念に基づいて、特に生徒に大事にしてほしいと考えておられる点はどんな点でしょうか。

佐藤先生

目指す生徒像として掲げているのは、他者とともに「倫理」ある文化、社会を形成する、真のリーダーを掲げています。

自分が社会の一員になるということは、自分の行動一つで、自分自身も、周辺もどんどん変えていけるようになるということです。だからこそ、自分のありたい姿や、進路のように向かうべき方向をしっかり意識すること、しっかり自分のことを知るということを本校で学んでもらい、その先も大切にしてもらいたいと思っています。

私たち教職員は、生徒には「自分の軸を持つ」という部分を特に意識してほしいと思いながら、指導に当たっています。

追手門学院中・高等学校の感性を磨き続ける探究学習

追手門学院中・高等学校の授業の様子

ここからは、追手門学院中・高等学校独自の探究科と呼ばれる教科について聞きました。この科目では、生徒が制作したアート作品を通して、自分自身を見つめる、ユニークな取り組みを行っています。

自分の憧れの姿になれる「仮面」の創作を通して自分を見つめる授業

編集部

追手門学院中・高等学校の探究学習について教えてください。

佐藤先生

追手門学院中・高等学校には、探究科という教科があり、2020年に発足しました。探究学習のカリキュラムは「自分の道を踏み続ける感性をOriginalityとCreativityで磨き続ける探究活動」をコンセプトにゼロから設計したものです。

学習を進めるうえで、大事にしていることは、自分を知ることです。

例えばSDGsについて考えるとなっても、SDGsに関することは、多くが大局的なテーマで、生徒にとってはなかなか自分ごととしてとらえにくいということがあります。

自分自身のことをきちんと把握できているのかどうか、自分は何が好きで何が嫌いなのか、何かそういったものを見つけるきっかけ、仕掛けを探究科の授業では意識して、組み立てています。

編集部

探究科の授業はどのように進められるのでしょうか。

佐藤先生

高校1年生ですと、アートの創作を授業で多く行っています。

創作では、何が正解なのかを生徒たちは探そうとしますが、答えはありません。ですから、本当に自分が自由に表現したいことを創るしかないんですね。創作を進めるなかで、自分の考えを形にしてみて、なぜこのような形になったのかを自分で振り返ったり、他者からのフィードバックを得たりすることで、作品を通して、自分がどんな人間なのかを知るというような機会を設けています。

編集部

アートを活用する授業の具体例はどのようなものでしょうか。

佐藤先生

色々と実施していますが、一例として「仮面プロジェクト」をご紹介します。

仮面プロジェクトとは、様々なテーマに従って、実際に仮面をデザインしてみるというものです。例えば、2023年ですと、高校1年生は「自分の憧れ」をテーマに、自分の憧れの姿になれる仮面を作りました。「自分が憧れる要素って何だっけ?」と考えながら、仮面をデザインするんですね。その作品を通して、生徒たちは改めて自分の憧れについて考えました。

追手門学院中・高等学校の教育理念「独立自彊」「社会有為」の下で展示された仮面プロジェクトの作品

▲追手門学院中・高等学校の教育理念「独立自彊」「社会有為」の下で展示された仮面プロジェクトの作品

編集部

とてもユニークで、楽しそうな授業ですね。生徒たちがデザインした仮面はどのようなものになったのでしょうか。

佐藤先生

本当に表現の仕方は様々です。自分の理想の人をイメージした生徒もいれば、自分の内面的にある憧れの要素を別のものに変換して、デザインに散りばめた生徒もいました。

段ボールで制作するのですが、トゲをつけて強さの象徴とするなど、細部一つひとつにも生徒の考えが盛り込まれているんです。完成後は、鑑賞会を開いたり、生徒同士でペアを組んで、いいと思ったところ、自分なりの解釈を伝えたりする機会も設けています。

編集部

生徒からどんな感想が寄せられるのでしょうか。

佐藤先生

授業の最後に振り返りを書いてもらっているのですが、やはり「気づきを得られた」という言葉が目立ちます。授業で制作を楽しみながら、自分のことを知ったことで、自分の思いを発信することにあまり躊躇がなくなったり、相手の思いをちゃんとくみ取れる生徒が年々増えていっているという印象です。

追手門学院中・高等学校の探究科の授業「仮面プロジェクト」の様子

▲追手門学院中・高等学校の探究科の授業で、仮面を制作する「仮面プロジェクト」に取り組む生徒たち

既成概念にとらわれない思考力を養う「ガムテープ・プロジェクト」とは

編集部

探究学習でほかにユニークな取り組みはありますか。

佐藤先生

先ほどの仮面プロジェクトは、一人で取り組むものでしたが、チームで新しい価値を取り組むプロジェクトもあります。一例は「ガムテープ・プロジェクト」です。ガムテープを題材に、本来とは違った目的で使うアイデアを出し合い、実際に使用している動画を制作するものです。

私たちにはガムテープは「何かを固定するもの」「梱包で使うもの」といった既成概念があります。授業ではチームで意見を出し合い、これまでの既成概念を覆すことで、新たなアイデアが生まれることを学んでもらうものです。

編集部

ガムテープが題材とは面白いですね。

佐藤先生

ガムテープはどこでも安価で手に入り、防水性もあるなど、多くの長所があります。生徒にはそういう点も踏まえて、何を作り、それをどういう人に届けたいかまで意識して考えてもらうのです。自分たちの好きなものを作って終わりにしないことで、生徒にアイディエーション(アイデアを生み出し、開発し、伝達するプロセス)を学んで、思考力を高めてもらうことを狙っています。

編集部

企業との連携もあるそうですね。

佐藤先生

はい、2、3年前は、ある地元の製造メーカーから、自社で使わなくなった生地をどう活用するか、というテーマをいただき、高校生らしいいろいろなアイデアを出し合いました。生徒たちは5、6人でチームを作り、ペットの服を作る、快適なアイマスクを作るなどのアイデアを、企業の方の前で披露しました。

こうしたことが、生徒の可能性を耕すような経験となり、自信を身につけて行動を起こすきっかけになれば、と考えています。

追手門学院中・高等学校からのメッセージ

追手門学院中・高等学校の校舎のエントランス

▲追手門学院中・高等学校の校舎のエントランス。最新の本が並び、生徒の交流の場になっている。

編集部

最後に、ぽてんの読者の方々へのメッセージをお願いします。

佐藤先生

探究科の授業をしていて印象的なのは、「とりあえずやってみる」という姿勢で、いろいろと実践しようとする生徒がとても多い、ということです。

探究科の授業を通して、おそらく自分と向き合う時間は、他の学校よりも多くあるのではないかと考えています。自分のことをもっと知りたい、好きになりたい、様々なことに挑戦したい、と思う方にとって、追手門学院中・高等学校は最適ではないかと思います。

ホームページは探究科のことをはじめ、インタビューなどとても充実していますので、こうした資料もよくご覧いただき、ぜひとも本校を志望いただければうれしいです。

編集部

本日は、誠にありがとうございました。

追手門学院中・高等学校の合格実績

追手門学院中・高等学校では、多くの生徒が国公立、私立大学、系列の追手門学院大学に進学しています。

2024年度の合格実績では、京都大4人、神戸大1人など、国公立(職業能力開発総合大学校、防衛大学校、防衛医科大学校合格含む)に58人が合格しました。私立(のべ数)では、早稲田、上智をはじめ、関関同立(※)に187人、産近甲龍(※※)に416人、系列の追手門学院大には109人が合格しています。関関同立など一部の大学に対しては、豊富な指定校推薦制度もあります。
(※)関西大学、関西学院大学、同志社大学、立命館大学の総称
(※※)京都産業大学、近畿大学、甲南大学、龍谷大学の総称

■追手門学院中・高等学校の合格実績(公式サイト)

https://www.otemon-jh.ed.jp/career/result/

追手門学院中・高等学校の卒業生・保護者の口コミ

追手門学院中・高等学校の授業の様子

ここでは、追手門学院中・高等学校の卒業生・保護者から寄せられた口コミを一部抜粋して紹介します。

(卒業生)追手門学院での授業は聞くだけのものは少なく、周りと協力して課題に取り組む参加体験型学習が中心なので、意欲的に取り組むことができた。

(卒業生)追手門には温かい先生が多い。特に、担任の先生には多くの気づきを与えてもらって感謝の気持ちでいっぱい。

(保護者)体験型の学習が充実しており、自分もこんな学校に行けていたら楽しかっただろうな、と感じる。土曜日の授業がないため、他の私立より子どもと過ごす時間が確保できるのも大きなメリット。

(保護者)若くてやる気のある先生が多い。授業にも工夫が見られる。

探究科の授業が特徴ということもあり、追手門学院中・高等学校に対する卒業生や保護者からの口コミには、探究学習の充実ぶりを評価する声が多い印象です。2019年に移転した新キャンパスに対しても、勉強しやすく、中高時代を満喫できる環境であることを支持する意見も目立ちました。

追手門学院中・高等学校へのお問い合わせ

運営 学校法人追手門学院
住所 大阪府茨木市太田東芝町1-1
電話番号 072-697-8185
問い合わせ先 https://www.otemon-jh.ed.jp/contact/
公式ページ https://www.otemon-jh.ed.jp/

※詳しくは公式ページでご確認ください