特色ある教育に取り組む“注目の学校”を紹介するこの企画。本記事では、広島市にある私立の女子中高一貫校「比治山女子中学・高等学校」を紹介します。
1939年の設立以来、脈々と受け継がれる建学の精神と五訓を守り伝える行事やカリキュラムが特徴的な同校。体育になぎなたを取り入れたり、学内のお茶室でお点前を学んだりする授業を通して、他人を思いやる心構えや礼儀を身につけることができます。
また、8月6日の広島平和記念日前後に設けられている平和週間や、国際協力に従事する外部講師を招き世界情勢のお話を聞くなど、世界や日本をさまざまな角度から見つめ直す取り組みも特徴です。
今回はそんな比治山女子中学・高等学校について、学校長の大林秀則先生と中学2年学年主任の木村真希先生にお話を伺いました。
この記事の目次
卒業後も生きるヒントに。比治山女子中学・高等学校が大切にする建学の精神
▲窓の外から緑が眺められる校舎B館
最初に、比治山女子中学・高等学校の教育理念についてお聞かせください。
本校は、「悠久不滅の生命の理想に向かって精進する」ことを建学の精神に掲げています。「私たち人間の生命が連綿と続くことに感謝し、未来永劫発展させるべく現在を精一杯生きるように精進する人間を育てたい」という意味で、これは比治山学園の初代学園長、國信玉三の教育理念にもとづくものです。
校訓は「正直・勤勉・清潔・和合・感謝」です。これら「五訓」を心に留め置きながら学校生活を送ることで、建学の精神で定めたような人間に育ってほしい、という願いが込められているのです。
クラス名にもこだわりがあると聞きました。
はい。本校のクラス名には、桜、藤、萩、菊、梅、松、竹など、植物の名前が使われています。これは、もともと植物学者だった國信初代学園長が名付けたものです。
「花は一輪でも美しく、たくさん集まるともっと美しい。命の限り枝葉を伸ばす花木の姿から多くを学んでほしい」との願いがこもっていると伝えられています。
学園の精神を今に伝える「校長訓話」
建学の精神や五訓を生徒に伝えるために、どのような取り組みをされていますか?
年に数回、校長先生が生徒たちにお話をする「校長訓話」という時間があります。國信初代学園長の考えを受け継いだ代々の校長が、その時代に合った言葉で生徒たちに想いを伝えているんです。
校長訓話は具体的にはどのような内容なのでしょうか?
中学生に対しては、先ほどの「五訓」を深堀りしていきます。「正直とはどういうこと?」「勤勉とは?」などと問いかけ、世の中の出来事や日本の昔話などわかりやすい事例に結びつけて噛み砕きながら、生徒自身に自分なりの答えを見出してもらうんです。
高校生に対しては、五訓からは少し離れて「ジェンダー平等とは?」「生成AIとの向き合い方は?」「進路決定とその後は?」といったテーマについて、偉人の人生観や私自身の経験などを紹介しながら掘り下げていきます。いずれも、今の不透明な社会で生きる生徒たちのヒントになればと思いながら話しています。
生徒たちからはどのような反応がありますか?
毎回、ワークシートを作って訓話を通して感じたことをまとめるのですが、みんないつもしっかり考えて学びを深めています。テーマが身近なものばかりなので、訓話で得た知見を毎日の生活の中に取り入れ実践している生徒もいます。卒業して何十年経った今でも、五訓を心に刻み大切にしているという卒業生もいるんですよ。
世界を見通す目を養う。比治山女子中学・高等学校のグローバル教育
▲オーストラリア短期留学中のようす
比治山女子中学・高等学校が力を入れているグローバル教育について教えてください。
国際化への対応ということで、高校には公立大学や私立大学の文系学部への進学を目指す「英語コース」を設置しています。このコースでは、高校1年生の終わりにオーストラリアへ約2カ月間短期留学をする機会を設けています。
▲オーストラリア短期留学中のようす
また中学校では年に1回、開発途上国へ国際協力を行うJICAや海外青年協力隊の方をお招きして、世界情勢について語ってもらう「世界の窓」という授業を行っています。
世界の窓で扱うテーマは、貧困や紛争などさまざまです。実際に現場で目の当たりにしてきた方からお話を聞くので、心に迫る内容ばかりですね。普段当たり前に思っていることが、他国ではそうではなかったりする。そんな話をスライドを交えながら聞くことで、自分を取り巻く環境についてあらためて考える良い機会になっていると思います。
新鮮なお話が聞けそうですね。他にも特徴的なイベントなどはありますか?
毎年、「レシテーション・スピーチコンテスト」という英語の暗唱大会を開催しています。英語を暗記してクラスの代表が発表するというイベントです。発表するのは合計8人ほど。前年度チャンピオンもエキシビジョンという形でお手本として暗唱を行います。
中学生は決まった文章を、高校生は自身が考えた英作文を暗唱します。高校生の発表内容は本当にさまざまで、短期留学に参加して考えたことを語った生徒もいましたし、大好きなマンガのキャラクターについて熱弁を繰り広げた生徒もいましたね。
社会で役立つ礼儀作法を身につける。比治山女子中学・高等学校の「心と体を育てる学び」
比治山女子中学・高等学校では、「心と体を育てる学び」をカリキュラムに取り入れているそうですね。
はい。美しい文字の書き方を知り精神を集中させる書道や、お花の美しい生け方を学ぶ華道、ミュージカルや能楽を鑑賞する行事など、心を豊かに育むさまざまな教育を行っています。中でも特に重視しているのは礼儀作法です。本校で6年間を過ごすことで、社会で役立つ礼法が身につくようにしています。
たとえばどのような工夫があるのでしょうか?
まず特徴的なのは、体育で「なぎなた」を教えていることです。武道のひとつであるなぎなたには、試合と演技の2つがあるのですが、本校で取り入れているのは決まった形(かた)を作る「演技」です。二人一組で行うので、相手との距離感を常に念頭に置いて動かなければなりません。互いに思いやったり気遣ったりしながら、生徒たちは礼儀や基本動作を身につけていきます。
マナー教室の一環で行う「お茶席体験」も特色のひとつかと思います。本校には茶室があり、学内で茶道のお点前を練習することができるんです。
茶室内にずらりと並んで、細かな所作やお茶の立て方を学びます。畳の境目を踏んではいけない、境目からどれぐらいの距離で座るなど初めて知ることだらけで、とても刺激になっているようです。
学内に慰霊碑も。比治山女子中学・高等学校が取り組む平和学習
▲戦没者慰霊碑がある学内の「瞑想の森」の一角
広島県にある御校では、平和学習にも力を入れていると伺いました。
はい。本校では原爆が投下された「広島平和記念日」の8月6日に、生徒会が中心となって原爆死没者追悼式を行っています。追悼式では、市内の軍司令部跡にある戦没者慰霊碑と、学内の「瞑想の森」にある慰霊碑を巡り、黙祷と献花をします。
7月には平和週間があり、追悼式に向けて折り鶴を折ったり、戦争体験者の方のお話を聞いたりします。爆風で飛来したガラスが刺さった校舎の柱の一部などが今も残っており、それを資料室から出してきて生徒に見せ、戦争の怖さを感じとる取り組みもしています。
本校では原爆で旧比治山高等学校の生徒73名と、教職員2名が亡くなっているんです。自分たちの先輩が実際に命を落としたと聞くと、より実感がわきますよね。生徒たちは、平和の大切さを学び、他人と調和していくことの重要性を再認識しているようです。
比治山女子中学・高等学校からのメッセージ
▲吹奏楽部の生徒たち。クラブ活動などさまざまな場面で、先輩の背中を見て学んでいる
最後に、記事をご覧のお子さんと保護者の方に向けてメッセージをお願いします。
中高一貫校の良いところは、目指したい指標となる「ロールモデル」がいつもすぐそばにいることだと思います。他校では学年間の繋がりがほとんどなかったりしますが、本校では体育祭や文化祭などの大きな行事や部活動は中高合同で行うため、先輩後輩の交流がふだんからあります。
つまり、中学生にとっては自分の5年後、6年後の姿が日常的に見える。「こんな風に成長したい」「私もこうなりたい」というイメージが身近で、縦の繋がりの中で刺激を受けて成長できる環境が整っているんです。
素直で礼儀正しく、元気で明るい生徒が育つ本校なら、6年間安心して過ごせると思います。比治山女子中学・高等学校で充実した学校生活を送ってみませんか。みなさんとお会いできるのを楽しみにしています。
開校以来息づく建学の精神や五訓を軸に、礼儀や他人を思いやる心を身につけられる行事やカリキュラムを組まれているのが印象的でした。また、グローバル教育や広島ならではの平和学習を通じて、広い視野で日本と世界を見つめる眼を養う工夫があると感じました。本日はありがとうございました。
比治山女子中学・高等学校の進学実績
▲4万8,000冊もの蔵書がある図書館
グローバル人材を育てる「英語コース」や、国公立大学・難関私立大学を目指す「特進コース」を備える同校は、毎年有名大学へ多数の合格者を輩出しています。令和5年度には、広島大学、島根大学、鳥取大学、愛媛大学などの国公立大学や、明治大学、立教大学、法政大学、同志社大学などの難関私立大学に多くの生徒が進学しました。
また、同校には比治山大学・比治山大学短期大学部への特別推薦枠があり、志願者は優先的に進学ができるのも特筆すべきポイント。令和3〜5年度には、53名の生徒が比治山大学への進学を決めています。
比治山女子中学・高等学校の卒業生・保護者・在校生の口コミ
▲中学校の修学旅行での一枚
最後に、比治山女子中学・高等学校に通う生徒の保護者から寄せられた感想の一部をご紹介します。
将来の目標に向かって真面目に取り組んでいる生徒が多く、卒業生からは学校の「五訓」を今でも心に留めているという声が多く上がっていました。また、保護者からは、まじめで熱心な先生が多いという声や、進路が保証されており安心といった声がありました。
▲体育祭などの行事もたくさん。将来を見据えながら、学校生活を楽しんでいる
比治山女子中学・高等学校へのお問い合わせ
運営 | 学校法人比治山学園 |
---|---|
住所 | 〒734-0044 広島県広島市南区西霞町5-16 |
電話番号 | 082-251-4478 |
問い合わせ先 | 比治山女子中学・高等学校 |
公式ページ | https://www.hijiyamajoshi-h.ed.jp/ |
※詳しくは公式ページでご確認ください