独自の教育を実践する注目の学校を紹介する本企画。今回は、岡山県倉敷市にある中高一貫の私立女子校「清心中学校・清心女子高等学校」を紹介します。
探究活動や理数教育に注力する同校は、2006年より、文部科学省の「スーパーサイエンスハイスクール(SSH)」に指定され、2024年現在では4期連続、15年以上の指定実績を誇ります。私立女子校で4期連続は同校のみの快挙です。
今回は、そんな清心中学校・清心女子高等学校の教育理念や探究活動、理数教育への取り組みについて、研究開発部長の田中先生にお話を伺いました。
この記事の目次
他者や社会に向けて行動できる人を育成する「清心中学校・清心女子高等学校」
まずは、清心中学校・清心女子高等学校の建学の精神や教育理念についてお聞かせください。
本校は、カトリックのミッション系女子校であり、女子が社会で活躍することを目指した教育活動を行っています。「心を清くし 愛の人であれ」を校訓に、感謝と奉仕の心をもち、他者や社会へ向けて行動できる人の育成を目指しています。
本校では探究活動に非常に力を入れているのですが、探究活動により問題解決力・協力体制や協働する姿勢を養うことが、社会貢献につながります。これは、特に本校の目指す「他者や社会に向けて行動できる人の育成」とマッチしています。
具体的には、中学1年生から「探究コース」という新たなコースを設け、探究活動に注力しています。
▲取材に対応いただいた研究開発部長の田中先生
18年間以上の実績「清心中学校・清心女子高等学校」の探究学習
清心中学校・清心女子高等学校の探究活動について教えてください。
本校では、中学1年次に全員が「探究コース」に入ります。探究コースは、グローバル探究とサイエンス探究の2つのパートに分かれていて、中学1年生では両方を学び、中学2年生でいずれかを選び「グローバル探究コース」「サイエンス探究コース」に進みます。
高校からは3つのコース(NDSU進学コース・特別進学コース・生命科学コース)に分かれますが、どのコースでも探究活動を実施しています。
本校は文部科学省から「スーパーサイエンスハイスクール(SSH)」に指定されており、探究学習関連の教育課程の開発を18年間にわたり継続して行っています。長年携わってきた中で蓄積したノウハウがありますので、教員も探究学習の指導・サポートに長けており、探究学習が本校の風土・文化として根づいていると思っています。
中学では、問題点を見つけ解決する力を身につける探究活動を実施
清心中学校の探究活動について教えてください。
中学1年生の探究コースではグローバル探究とサイエンス探究2つについて学びます。
グローバル探究では、地域や世界の社会課題に果敢にアプローチする力を育むため、起業家精神や起業家としてのスキルを育成する「アントレプレナーシップ教育」を行っています。全員が起業を目指すわけではないですが、リーダーシップや企画立案力、課題を見つけて問いを立てる力などを習得していきます。
新しいコースができたばかりなので中学1年生の教育をしている段階ですが、学年が上がるに従って、地域の課題を自分たちで捉え、それに対する改善策、解決策を提案し、調査を踏まえて研究する活動としてまとめていく計画です。
グローバル探究として、どのような活動をされましたか?
これまでに、起業ゼミを行いました。
このゼミでは起業家を講師に迎え、身の回りの困りごとや課題に目を向けることを学びました。困りごとや課題は、本人に限らず、家族や周囲の人々の問題点であってもかまいません。家族や周りの人にインタビューを行い、日常生活の中で、普段気づかないような問題点や課題を見つけ出しました。
今後は、それらの課題に対して、解決につながるアプローチを考え、トライ・アンド・エラーを繰り返しながら解決できるよう模索していく流れです。このようにして企画を立て、実行に移すことで、実際に課題解決に取り組む経験を積んでいるところです。
また、中学1年生の秋頃に、倉敷の美観地区を中心としたフィールドワークを経験して、そこでインタビュー調査を行い社会の課題を見つけて、それに対する課題解決に向けて取り組みたいと考えています。
(※取材は2024年5月30日)
サイエンス探究ではどのようなことを学ぶのでしょうか?
サイエンス探究は、科学的視点や思考、モノづくりの観点を意識した上でさまざまな現象や課題を探究するプログラムです。
例えば、これまでに授業で行ったのは、限られた紙や新聞紙を使い、枚数制限を設けてできるだけ高いタワーを作ります。それを組み込んでオブジェを作りました。これには建築や数学の要素が含まれています。
今後はより探究的なテーマを見つけて実験や課題研究を行うなど、中学2年、3年でより発展させていく予定です。
▲限られた紙を使い高いタワーを作る生徒たち。折り方を工夫して、より高いタワーを作れるよう奮闘
高校では、一つの研究テーマを持ち深く探究する
清心女子高等学校ではどのコースでも探究学習をされているそうですね。高校の探究学習はどのように進められているのでしょうか?
高校は、中学よりもよりアカデミックな内容に踏み込みます。
高校2年で1つのテーマを見つけて研究する「課題研究」のカリキュラムを行うのですが、その前段階として、高校1年では、課題研究を行うための基礎スキルを学びます。課題の見つけた方、文章のまとめ方、論文の検索方法、論文のまとめ方、プレゼンテーションの仕方などです。
中学の探究学習との違いは、外部とのつながりが強くなる点です。例えば大学やNPO団体、行政から講師を招いて講演いただきテーマを見つけるきっかけにできるような取り組みも行います。
清心女子高等学校では、かなり長く探究活動をされていますが、長く取り組まれているからこその特徴などはありますか?
何年も取り組んでいるので、課題研究も先輩の研究データが蓄積されています。そのような環境を活かして先輩の研究を踏襲して課題研究を始める生徒が多いです。先輩の研究データを参考に、自分の中で条件を変えてみよう、材料を変えてみようといった新たな発想が自然と湧いてきて、オリジナルの研究になっていくケースが多いと思います。
例えば理科の研究でいえば、「身近な植物を使った止血作用」を調べた先輩の研究を参考にして、研究の改善点や、より良い結果が出る植物を考えるなど研究をブラッシュアップし、より止血効果の高い植物の選定をこなしていった事例があります。
課題研究をする中で、生徒さんの成長を感じる場面はありますか?
高校2年生で研究がスタートする段階では行き詰まる生徒が多く、教員がメンターとして助言やサポートを行うことが多いです。しかし、秋になり研究発表会が始まる頃には、生徒がすっかり自主的に、主体的になっており、目覚ましい成長を見せてくれます。
リカジョ育成賞も受賞。大学並の環境で学べる理数教育
▲大学で実習する様子。理系や研究への興味がより刺激される
次に、清心中学校・清心女子高等学校の理数教育について教えてください。
女子の理系進出を応援したい思いで理数教育に力を入れるようになり、2006年から4期連続、15年以上のSSHに指定されています。
本校の理数教育は、単に理数教育に力を入れているというよりも、理系分野の大学に進学したあと体験するような学びの機会を提供しています。例えば本校には大学で使うような遺伝子解析のPCRがあります。十分に整った設備の中で学びを深めることができるのは本校の強みかと思っています。
具体的にはどのようなことを学べるのでしょうか?
大学で実習をさせていただいたり、大学の先生から指導を受けながらフィールドワークを行うなど、高大連携だからできる取り組みの機会が多いです。高校1年の段階でも、年に4~5回程度、高大連携に関連した実習の機会があり、理系に興味がある生徒にとっては、普通の高校では体験できない貴重な体験ができます。
高校2年生では、屋久島をフィールドに専門家のもとで研究をする、研修旅行も行っています。屋久島をフィールド調査して、科学的なデータを得て、まとめて発表します。単純に理系教育というよりも、より革新的な本校独自の取り組みを実施しています。
また、「女子の理系進出を応援する」という目的は、本校の生徒だけでは解決できないため、その輪を広げていく必要があると思っています。そのため、女子生徒による科学研究発表交流会を開催するなど全国リカジョネットワークをつくり全国の女子中高生が交流できる取り組みも実施しています。
このネットワークの取り組みが評価され、日産財団の「リカジョ育成賞」を受賞しました。
▲屋久島を舞台にした研修。専門家の協力のもと、より深く研究する
御校では、理系に進む生徒や高校卒業後に研究職を目指される生徒は多いですか?
SSH指定以前(2006年以前)は、女子の理系と言えば医療看護系が9割でしたが、SSH指定以降は、理学部・農学部・工学、いわゆる研究系の理系学部に進む生徒が割合としては増えてきています。
理系が大幅に増えているわけではないのですが、本校では理系への進学が全体の4割ほどで、その4割の中の内訳が変わってきました。
清心中学校・清心女子高等学校からのメッセージ
最後に、清心中学校・清心女子高等学校に興味をもたれたお子さまや保護者に向けてメッセージをお願いします。
現在の教育は、自ら課題を見つけ、それを解決する力が重視されていると思います。そういった時代を見据えて、本校では教育課程や行事を組んでいます。授業カリキュラムの充実だけでなく、体育祭や文化祭など中高一緒になって盛り上がる行事もたくさんあり、とても有意義な学校生活を過ごせます。
もし本校に興味をもっていただけたのであれば、ぜひ一度足を運び、学校の雰囲気を感じてみてください。オープンスクールも行っています。オープンスクールでは、やさしい先輩たちが本校を案内してくれますので、ご来場をお待ちしています。
本日は貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。
▲中高一緒になって盛り上がる体育祭。学校行事が楽しいところも同校の魅力
清心中学校・清心女子高等学校の進学実績
▲英語の授業では、ネイティブ教員による授業も実施。英語力の向上にも力を入れている
清心中学校・清心女子高等学校では、ほぼすべての生徒が進学しており、国公立大学や難関私立大学に合格実績も多数あります。また、本校では140大学、450名を超える指定校推薦枠があり、多くの生徒が指定校推薦制度を利用して私立大学に進学しています。
2024年大学入試の主な合格実績(令和6年4月現在)としては、お茶の水女子大学、大阪大学、岡山大学、広島大学、島根大学、香川大学、愛媛大学、佐賀大学ほか多くの国公立大学に合格しています。
国公立大学を含む医学・歯学・薬学・看護学の合格実績としても多数の合格者を輩出しています。
私立大学の合格実績としては、上智大学、明治大学、青山学院大学、学習院大学、同志社大学、立命館大学、関西学院大学ほか多数。例年、系列校であるノートルダム清心女子大学の進学者が一番多く、2024年は57名が合格しました。
■進学実績(清心中学校・清心女子高等学校公式サイト)
https://www.nd-seishin.ac.jp/shinro/university/
清心中学校・清心女子高等学校の卒業生・保護者の口コミ
▲学校生活をより充実させる部活動(右:ダンス部)。探究活動の一環でミュージカルをすることも。
ここからは、清心中学校・清心女子高等学校の口コミを紹介します。実際に通学していた卒業生や保護者の声をまとめました。
学校生活を満喫している生徒の声が多くあがっていました。また、保護者からは、キリスト教教育の学校ならではの「心の成長」が見られたことへの評価も多くありました。
▲学校行事では、ミッションスクールならではのクリスマス会を実施
清心中学校・清心女子高等学校へのお問い合わせ
運営 | ノートルダム清心学園 清心中学校・清心女子高等学校 |
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住所 | 岡山県倉敷市二子1200 |
電話番号 | 086-462-1661 |
公式ページ | https://www.nd-seishin.ac.jp/ |
※詳しくは公式ページでご確認ください