独自の教育を実践する注目の学校を紹介する本企画。今回は、福岡県大牟田市にある中高一貫の女子校「明光学園中学校・高等学校」を紹介します。
明光学園中学校・高等学校は、1952年に創立。世界36ヶ国にあるカノッサ修道女会が日本で最初に設立した学校であり、キリスト教に根ざした教育を行っているカトリックのミッションスクールです。講話や黙想を通して自分と向き合う授業を設け、他者を思いやる気持ちを養っています。
また、学校にはさまざまな国のルーツを持った生徒が集い、共に学んでいます。探究学習にも力を入れていて、学びの成果を医学会で発表する生徒もいるほどです。
今回は、そんな明光学園中学校・高等学校の教育方針や取り組みについて、同校の校長を務める諸田浩美先生とICT国際教育推進部長の島ノ江純先生にお話を伺いました。
この記事の目次
他者を大切にし、言葉を大切にする明光学園中学校・高等学校
▲取材に対応いただいた諸田浩美校長先生
最初に、明光学園中学校・高等学校の教育方針についてお伺いできますか?
本校の教育方針は「愛と奉仕の精神」です。キリスト教に基づく全人格的教育を柱に「宗教的情操教育」と「個性尊重の教育」、「国際的な教養を身につける教育」の3つの教育理念を掲げています。
そして、私が近年、生徒に強調して伝えていることは「他者を愛せよ」ということです。思春期の生徒たちには「愛せよ」の意味がわかりにくいようですが、聖書が日本に伝わったとき、「愛」は「大切」と訳されました。
つまり「他者を愛せよ」とは、自分以外の人を自分と同じように大切にしなさいということです。具体的には、言葉遣いに気をつけましょうと常々伝えています。つい言葉が過ぎてしまうことがあるかもしれませんが、言葉で人を傷つけないように注意しましょうという意味を込めています。
そう呼びかけていく中で、生徒たちに変化はありましたか?
入学したばかりの頃は、やや粗野な印象を受ける生徒も見受けられますが、本校の雰囲気に触れることで次第に変わっていきます。中学1年から高校3年までの6年間で、立ち振る舞いがずいぶんと改善され、落ち着いた雰囲気を身につけている印象が強いです。
国連職員らの講話を聞き、自分の内面と向き合う授業「静修」
▲ミッションスクールならではの学校行事、聖母祭の様子
御校の教育活動の中で特徴的なカリキュラムがあれば教えてください。
本校では毎週1時間の宗教の授業とは別に、月に1回「静修」という授業を設けています。「静修」とは「静かに修める」という意味です。ホールに集まって、シスターからテーマを与えられ、それについて1人で静かに内省する時間です。
例えばどんなテーマがあるのでしょうか?
中学生と高校生は別々に行っており、高校では、日本人初の国連難民高等弁務官として活躍された緒方貞子さんをはじめ、世界に貢献された方の話を聞き、自分たちは今どのようなことができるかを考えてもらっています。中学では、マナーとは本来どのようなことなのかという講話などがあります。
また、「静修」の時間内には、正座黙想の姿勢で優しくきれいな音楽を聞きながら内省する「静修の姿勢」の時間もあります。コミュニケーションやディスカッションは一切なく、授業の終わりには、考えたり思ったりしたことをノートに書きます。
「静修」の授業を通じて生徒さんの変化や成長を感じることはありますか?
最後に書くノートによって、生徒たちの心境の変化や成長を窺い知ることができます。
生徒の中には、私たちの「他の人のことを大切にしましょう」という呼びかけについて、実際にどうすれば良いのかがよくわかっていない子どもも多くいます。友だちや家族との関係に悩みを抱える生徒もいます。
そういった生徒たちが、「静修」で自身を省みることで、気付きを得られることもあるそうです。授業に臨む真剣さは生徒によって差があるものの、生徒全員が考えることを繰り返しながら、少しずつ考えを深めていると感じます。
▲お昼の祈りの時間
いろいろなルーツをもつ仲間と学ぶ明光学園中学校・高等学校のグルーバル教育
次に御校のグローバル教育で注力している点についてお聞かせください。
本校のグローバル教育の目標は、英語力を伸ばすことと国際理解を深めることです。本校にはお母さんがフィリピンの方、お父さんが韓国の方、ご両親ともナイジェリアの方、お父さんがイタリアの方など、外国にルーツを持つ生徒もたくさんいます。
そんな中で私たちは、育った文化、ルーツなど、一人一人のさまざまなバックグラウンドを大事にしています。
先ほど申し上げましたように、本校では「愛と奉仕の精神」、人を大切にすること、一人ひとりの違いを受け入れて仲良くしましょうといったことは、普段から何度も説いておりますので、みんなが仲良く楽しく過ごしています。誰に対しても先入観を持つことなく、友だちになれるのは本校の誇るべき校風だと思っています。
世界に約160ある姉妹校と交流し英語力を磨く
▲上海の生徒と交流する明光学園中学校・高等学校の生徒
英語力向上や国際理解のための具体的な取り組みについて教えていただけますか?
中学校では、ライティング・スピーキングなどのアウトプット活動を中心に行う「TIE(Topics in English)」という特別課外授業を設けており、生徒に実践的な英語力の向上を目指してもらっています。これは、成績上位者だけが参加できるため、生徒たちのモチベーションアップにもつながっています。
また、本校は全世界に約160の姉妹校がありますので、姉妹校の生徒とオンラインで交流をして、英語力や国際的な視点を養っています。
高校になると1年の春休みに、海外ホームステイ・語学研修があります。2年の夏休みには、福岡県のアジア派遣研修事業でタイ・ベトナム・マレーシアなどへの海外研修に参加することもできます。修学旅行はシンガポールです。姉妹校を訪問し、文化交流をしながら、英語の授業で培った語学力を試します。
また、先生とマンツーマンで英会話レッスンができるオンライン英会話も導入しています。この他にも多くの国際交流の機会や英語力向上のためのプログラムを用意しています。
成果は大学進学にもつながる明光学園中学校・高等学校の探究学習
▲取材に対応していただいた探究活動を担当している島ノ江純先生
探究学習について、お話をお伺いできますでしょうか?
本校の高校では、2019年から「課題研究」という科目で探究活動をスタートしました。課題研究では、課題を発見する力、情報を収集する力、分析する力、研究内容を表現・発表する力を身につけることを意識して活動しています。
コースの特色に合わせて内容を変えており、中高一貫で上がってきた生徒が所属する「ソフィアコース」と「特進コース」については、高校1年生で探究の基礎を学び、2年生では個人で研究を行い、発表会をして、3年生で論文にまとめるといった流れになっています。
看護系の系属校「聖マリア学院大学」の先生から助言をもらえる
▲聖マリア医学会で課題研究を発表した生徒たち
例えばどんなテーマの研究をするのですか?
例えば「白衣高血圧と音楽の関係」というテーマを調べた生徒がいました。「白衣高血圧」といって白衣を着た人が目の前にいると血圧が上がってしまう現象があるらしいのですが、それをどうやって和らげるかという課題で、音楽が一つの鍵になるのではないかと考え、高齢者や大人に協力してもらい、実験してデータを取って分析した生徒がいました。
ほかには「電車で居眠りをするときにどういう座り方が一番寝やすいか」、「高齢者の孤食を減らすためにはどのような取り組みが有効か」、「高齢者がイキイキと生活するためにどんなイベントを行えばいいか」といったテーマが印象に残っています。
今ご紹介したような医療に関連するテーマについては、本校の系属校である聖マリア学院大学が看護系大学ですので、同大学の先生に具体的なアドバイスをいただくことができます。過去には、聖マリア医学会という学会で、本校生徒の課題研究を発表させていただく機会もありました。
本校での発表会を聖マリア学院大学の先生に見ていただく中で、この研究内容は学会でも通用するということで5名の研究を選んでいただいて、その後、数ヶ月かけてブラッシュアップしたものを医学会で発表しました。
探究学習の成果を生かし、総合型選抜で九州大に進学した生徒も
▲課題研究の成果を発表するポスター発表会の様子
課題研究を行っている生徒さんはどのような様子なのでしょうか?
ソフィアコース・特進コースは、個人研究をポスター発表会で締めくくります。大学の先生にも見ていただくこともあり、しっかりと準備をする必要がありますし、発表会当日は生徒もとても緊張していました。私が思っている以上に、真剣に課題研究に向き合っていると感じました。
研究活動は忙しいので負担に感じている生徒も少なくないと思うのですが、最後の発表会や高校3年生で論文を完成させたときには大きな達成感を味わえます。
普段、一つの問題を長く考えることはないと思うので、じっくり考える課題研究は良い経験になっていますし、それをまとめてわかりやすく人に伝える表現力も身についていると思います。
ここ最近は課題研究の実績を利用して、総合型選抜や推薦入試で目標の大学に合格する生徒も出てきています。九州大学の共創学部や佐賀大学の理工学部、熊本大学に合格した生徒がいますし、私立大学では久留米大学の医学部看護学科に合格した2名も課題研究を活用しました。
現在(2024年度)、探究学習・課題研究を行っているのは高校だけですが、今後は中学校から総合的な探究に向かうためのプロセスを取り入れたいと考えています。
中学校では1人1台のiPadを導入しているので、iPadの活用方法の基礎を中学1年生・2年生で学び、3年生では自分がやりたいことを課題研究する方向で今、検討中です。
▲図書室で課題研究に取り組む生徒たち
明光学園中学校・高等学校からのメッセージ
▲文化祭の様子
最後に、明光学園中学校・高等学校に興味をもったお子さまや保護者の方に向けてメッセージをお願いします。
カトリック学校の女子校は珍しくなってきましたが、女子校だからこそできる学びや学校生活のおもしろさ、楽しさがたくさんあると思っています。
思春期に異性の目を気にせずに、女子だけで過ごす6年間はとても有意義です。ぜひ本校で人として成長し、女性として磨きをかけてほしいと思っています。
体育祭や文化祭、修学旅行など一般的な学校行事のほかに、クリスマスの集いや聖母祭、ミサなどミッションスクールならではの楽しい行事もあります。部活動も盛んで、スポーツ部が5つ、文化部が14、同好会が2つあります。寮もありますので遠方の方もご入学いただけます。
もし本校に興味をもっていただけたのであれば、ぜひ一度足を運び、学校の雰囲気を感じてみてください。
本日は貴重なお話を聞かせいただき、ありがとうございました。
明光学園中学校・高等学校の進学実績
▲明光学園中学校・高等学校の寮
明光学園中学校・高等学校では、ほとんどすべての生徒が進学しており、国公立大学や難関私立大学に合格する生徒もいます。
令和4年度(卒業生70名)の合格実績としては、国公立大学は九州大学3名、熊本大学1名、佐賀大学2名、九州歯科大学1名、北九州市立大学2名、文部省管轄外の大学校は防衛医科大学校1名、防衛大学校3名が合格しています。
私立大学は、早稲田大学、上智大学、関西学院大学、立命館大学などの難関・有名私立大学を含む多くの私立大学に多数合格しています。
また、カトリック校のみに与えられる指定校推薦として、上智大学、南山大学、清泉女子大学、ノートルダム清心女子大学の推薦枠があります。系属校推薦型選抜では、聖マリア学院大学に進学できます。そのほか立教大学、津田塾大学、立命館大学、関西学院大学など全部で100校以上の指定校推薦があります。
■進学実績(明光学園中学校・高等学校公式サイト)
https://welcome.meiko.ed.jp/introduction/achievements/
明光学園中学校・高等学校の卒業生と保護者の声・口コミ
▲クリスマスミサ(クリスマスの集い)
ここでは、明光学園中学校・高等学校の口コミを紹介します。実際に通学していた卒業生や保護者の声をまとめました。
明光学園中学校・高等学校への問い合わせ
運営 | 明光学園中学校・高等学校 |
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住所 | 福岡県大牟田市倉永170 |
電話番号 | 0944-58-0907 |
公式ページ | https://welcome.meiko.ed.jp/ |
※詳しくは公式ページでご確認ください。