地元沖縄を見つめ、グローバルに通用する力を養う興南中学校・高等学校の教育とは|中高一貫校

ぽてんをご覧の皆様に、注目の学校をご紹介する本企画。今回取材したのは、沖縄県那覇市にある私立の中高一貫共学校「興南中学校・高等学校」です。

1962年に設立され、沖縄県内で最も歴史のある私立学校の興南中学校・高等学校。地元沖縄に目を向けるとともに、その先にグローバルでも活躍できる人材を育む総合学習には定評があります。

また、難関大学への進学者を多く輩出する一方で、甲子園春夏を連覇した経験がある野球部をはじめとして部活動でも優秀な成績を残すなど、文武両道を実践している学校でもあります。

今回は入試広報部主任の宇栄原先生に、特色ある教育カリキュラムや、部活動などについてお話を伺いました。

「沖縄を興し、世界で活躍する人材を」。興南中学校・高等学校の建学の精神

興南中学校・高等学校の生徒

編集部

まず、興南中学校・高等学校の成り立ちや、建学の精神についてお聞かせいただけますか?

宇栄原先生

本校は、終戦後の1962年、沖縄の今後のために将来の担い手の育成が急務であるとの考えから創立されました。学校名の「興南」は文字通り、「南(沖縄)を興す」という意味で、建学の精神にもなっています。

紛争や疫病、災害など、世界情勢は混沌としているなかで、生徒たちには確固たる信念をもち、沖縄、そして日本を発展させるようなリーダーとなってほしい。そして、ゆくゆくは世界でも活躍してもらいたい。建学の精神には、そんな社会に貢献する人材を育成するとの思いが込められています。

編集部

この建学の精神のもとで、どのようなカリキュラムのコースが設けられているのでしょうか。

宇栄原先生

本校には3つのコースがあります。いずれも普通科で学業を最も重視する「フロンティアコース」、学業を重視し部活にも打ち込める「特別進学コース」、学業を優先し部活に打ち込める「総合進学コース」です。

「フロンティアコース」は、中高一貫の生徒が学んでおり、中学段階で英語・数学・国語・理科などで高校分野を意識した授業を実施しています。主に、難関の国公立大、私大、医歯薬獣医学部を持つ大学の現役合格を目指すものです。また、中高6年間を活用して、総合学習を充実させているのも特長です。

高校からの入学者は、「特別進学コース」か「総合進学コース」を選択します。いずれも大学進学を視野に入れていますが、「特別進学コース」は県内外の国公立大や私立大を目指すもので、大学入学共通テストの受験を必須としています。

一方、「総合進学コース」は普通科文系のカリキュラムで、県内や国内トップクラスの部活動で活動できるコースです。ここでは、野球やハンドボール、バスケットボールなどのプロスポーツ選手や、オリンピック選手を輩出しています。

興南中学校・高等学校の生徒たちの学業と部活動のイメージ

▲学業やスポーツなど、目の前の課題に一生懸命に取り組む興南の生徒たち

地域の課題に向き合い、世界に飛躍する人材を育てる「興南中学校・高等学校」の総合学習

興南中学校・高等学校の生徒がPCを操作する様子

興南中学校・高等学校では、南(沖縄)を興すという、建学の精神に沿った総合学習に力を入れています。地域の課題の解決策をしっかり考え、世界に羽ばたくことができる人材の育成を視野に入れたものです。ここでは、中学校、高等学校それぞれの総合学習の取り組みについて聞きました。

中学生が起業も。沖縄の課題に取り組む「興南まなVIVA」とは

グラウンドに座る興南中学校・高等学校の生徒たち

編集部

「フロンティアコース」における総合学習について、具体的に特色をご説明いただけますか。

宇栄原先生

フロンティアコースは、確かな学力の形成と、社会のリーダーとなる人材の育成を目標としています。具体的にどんな人物を指すかというと、地域の文化や特性をもとに、世界に視野を広げて、地球規模で活躍できる「グローカル(※)リーダー」です。
(※)glocal(グローカル)は「global(世界規模の)」と「local(地域の)」を合わせた意味を持つ言葉

本校では6年間でグローカルリーダーの資質を創る環境を整えており、そのための取り組みの一つが、2014年から始めた、次世代総合学習の「興南まなVIVA」です。

「興南まなVIVA」は、伝統文化、自然環境、産業、国際、社会福祉のカテゴリーに、地元沖縄の課題を分け、中学1~3年の生徒がチームを組んでどれか一つについて考えるものです。生徒たちは学校の外に飛び出して、実際に課題解決に挑戦します。

自然環境に関する課題であれば、実際に森まで足を運び、生徒自身がコンタクトを取った専門家から話を聞いてみる。産業であれば、会社を設立して、ビジネスをし、上がった収益から出資者に配当を配るところまでやります。

編集部

会社を設立するとは本格的なチャレンジですね。具体的にどのように進めていくのか教えていただけますか。

宇栄原先生

過去にあったのは、ヤギのミルクを使ったスイーツを作り、販売するというプロジェクトです。どうやったら沖縄の地域が盛り上がるかという問題意識のもと、生徒たちが考えたのは「もっと沖縄の産品が売れたら、地元経済が活性化するのではないか」というプランでした。

それで着目したのが、ヤギのミルクです。「風味が苦手な人がいるかもしれないから、スイーツに加工したら多くの人、もしかしたら県外の人にも支持されるのではないか」と考えました。興南まなVIVAでは生徒たちが、利益だけではなく、地域の良さをどう広く発信し、活性化につなげていくかという観点を常に意識するようにしています。

ビジネスを進める資金は、教員が納得したうえで、少額を出資するルールにしており、資金を得るために生徒は一生懸命、教員に事業内容をプレゼンテーションします。その際には教員も「これでは利益上がらないのでは」などと、生徒の反応を試すのですが、生徒も「こんなふうにやるのでその問題はない」「その点は少し検討したい」などと応じて、社会で必要な交渉術を磨いていきます。

ヤギミルクを使った白玉ぜんざい、パンケーキは校内で売り、出資した先生には配当として、地域の産品である豚のウィンナーを配りました。きちんと収支の管理も行い、中学生とは思えないような経験をしたと思います。

関心のあることをとことん追究。「KTPアワード」の取り組み

興南中学校・高等学校で行われたKTPアワード表彰式で撮影された記念写真

▲KTPアワードで、優秀な成果を収めた生徒を称える表彰式の様子。高校の生徒が自身の関心あることについてプレゼンテーションする

編集部

進級して「興南高等学校」に進むと、どのような探究のプログラムを行うのでしょうか。

宇栄原先生

中学生はグループでの探究学習であるのに対し、高校生は個人で自身の興味、関心のあることについて突き詰めます。高校2年生になると、他の高1・2生の前でプレゼンテーションをするんです。

優秀な発表については、生徒が投票し、優勝を決める「KTPアワード」(※)という大会をやっています。生徒には、優勝することよりも、自分が本当に関心があることに対して、何らかの挑戦をし、結論まで導いていくプロセスを体験してほしいと思っています。
※KTPは興南探究プロジェクトの略

編集部

KTPアワードではどんな発表があったのでしょうか。

宇栄原先生

発表を見ていて、教職員がいつも舌を巻くのは、聴衆を引き付ける説明の上手さや、発表テーマを考える発想力です。

例えば、2023年度にアワードで優勝した生徒は「尊敬されるためには」というテーマに関する研究成果を発表しました。尊敬される人はどんな行動をしている人かを調べ、スライドも見やすく工夫していました。発表の時は、手元資料を読み上げるのではなく、聞き手に語りかけるような口調で説明し、実際に高校1・2年生たちはすっかり引き込まれた様子でした。大人でも聞き手を意識したプレゼンテーションをするのはなかなか難しいと思いますし、私も純粋にすごいなと思いました。

また、発表が終わればそれで終わりというわけではなく、同じテーマで書かれた大学の先生の論文を読んでみるなど、より発展的な学習にもつながっており、生徒もいろいろと学ぶことが多かったのではないかと思います。

発表・プレゼンをする興南中学校・高等学校の生徒たち

▲KTPアワードでは弾き語りをする生徒も(左上)。また、提案力を活かして校内環境を改善する取り組みも実施している(右下)

宇栄原先生

別の例でいうと、バンド活動をしている生徒が、「売れる音楽ってどんなもの?」という分析をしたのも、大変興味深かったですね。実際に売れている曲の特徴やコード進行とかを分析して、どうすれば売れる曲になるかを導き出していました。

さらにこの生徒は「ラブソングであればこの要素を含めば売れる」ということで実際に歌を作り、アワードの発表会でギターを弾きながら披露したんです。フルバージョンはSNSにアップする旨もしっかりアピールして、場を沸かせていました。

甲子園常連の野球部、観光ガイドを行う興南アクト部。興南の多彩な部活動とは

興南中学校・高等学校は、高校の野球部をはじめとして、全国レベルで活躍する部活動が多いのが特徴です。また、主に修学旅行生を相手に観光案内をする、地域色豊かな部活動もあります。ここでは、同校の部活動の特色について、お話をうかがいました。

生活習慣を見直して3か月で甲子園への切符を手に。興南の野球部が強豪である秘密

興南高等学校の野球部

▲甲子園で春夏連覇を果たすなど、全国でも指折りの強豪として知られる興南高等学校の野球部

編集部

興南中学校・高等学校では、クラブ活動も非常に盛んだと伺っています。特徴についてご紹介いただけますか。

宇栄原先生

かつて本校には、体育科というスポーツに特に注力するコースがありましたが、先ほども申し上げたように、現在は文武両道の実践が大前提です。学業を優先したうえで、部活動にも取り組むことを重視しています。

また、特に伝統があり、毎年大会で上位になるような活躍をしている高校の野球部、男子ハンドボール、男子バスケットボール、剣道部の4つの部活動を強化指定部に設定しています。

編集部

野球部は、甲子園出場の常連ですが、学校生活との両立など、どのように活動しているのでしょうか。

宇栄原先生

野球部は1966年夏に甲子園初出場し、通算24勝、連勝記録は13連勝と、本校を代表する部活動です。2010年には当時、史上6校目となる春夏連覇を達成することができました。

野球部の活動の根底にあるのは、現監督で、本校を運営する学校法人興南学園理事長でもある、我喜屋優の「野球を通して人間教育を行う」という方針です。

2007年に我喜屋が監督に就任したころ、野球部は甲子園優勝から遠い存在でした。部を立て直そうと、我喜屋が目を向けたのは、部員たちの生活です。寮は掃除が行き届かず、部員たちは夜型の生活になっていた。そこでまずは生活の改善から始め、きちんとした毎日を過ごしていけば、野球、部活動につながってくるだろうと考え、寮の掃除から始めたんですね。

さらに早朝の散歩を日課と決め、道中のごみ拾いをするなど、規則正しい生活習慣に変えました。すると部員たちはみるみる生活に張りが出て、目の色が変わっていったそうです。その結果、我喜屋が就任してから3か月で、24年ぶりに甲子園出場を決めることができました。

編集部

強豪である理由は生活習慣から始まっているのですね。とはいえ、学業と野球の練習を両立するのは大変そうだと感じたのですが、いかがでしょうか。

宇栄原先生

おっしゃるとおり野球の練習が大変なのは事実です。ただ、「練習に費やす時間を確保するために、授業でわからない箇所が出てきたらすぐに質問する」など、生徒はいろいろと工夫してくれています。

定期テストが近くなってから、疑問をなくそうとするのは、非効率だという考えのようで、生徒には貴重な時間をうまくマネジメントできる習慣が身についていきます。

編集部

ほかの運動部についても、特徴はありますか。

宇栄原先生

沖縄ではハンドボールが盛んで、本校でも注力している部活のひとつです。強化指定部の男子ハンドボール部は、インターハイの沖縄県予選で今年度も優勝し、20連覇を達成しました。沖縄県出身の生徒だけで構成されていることもあって、大変誇らしいと思います。

興南高等学校の男子ハンドボール部の試合の様子

▲沖縄ではハンドボールが盛ん。興南高等学校男子ハンドボール部はインターハイ県予選で20連覇を達成した

修学旅行生らに沖縄の魅力を伝える部活。興南中学校・高等学校の「興南アクト部」

修学旅行で訪れた高校生に首里城を案内する、興南アクト部の部員たち

▲興南アクト部は、修学旅行で訪れた中学生や高校生に首里城を案内する取り組みを行っている

編集部

文化系の部活動では、興南アクト部の取り組みがユニークだそうですね。どんな部活動なのかご紹介いただけますか。

宇栄原先生

興南アクト部は、中学生、高校生両方が参加する部活動です。本校でも大所帯の部で、80人ほどの生徒がいます。

もともとは沖縄のことを学ぶことをメインにしていた部なのですが、沖縄に詳しくなった知識を活用して、修学旅行で訪れた中学生や高校生らを相手に、首里城などのガイドツアーをやり始め、今に至ります。ほかにも台湾や香港の学生と一緒に、沖縄のお菓子「サーターアンダギー」を作って沖縄のことを知ってもらうような交流活動も行っています。

中高の生徒がいる部ですので、大人顔負けのガイドをする高校生を見て、中学生は刺激を受け、どんどん上達するという好循環が生まれています。中高一貫校だからこそなせるメリットだと感じています。

とても印象的だったのは、数年前、ある地方議員の方々12人をガイドしたときのことです。通常は2時間程度の時間をかけてガイドしているルートでしたが、先方のご都合で「1時間で回りたい」という依頼がありました。そこで登板したのが、興南アクト部のエース級の5人の生徒でした。

当日現地に向かう車中で、1時間のうちの説明の担当分けから、どの部分の説明は残すか、省略するかを、10分程度の簡単なミーティングで決めて、本番ではきちんと制限時間内に終わらせることができたのです。生徒たちからプロ意識をひしひしと感じましたし、先方からはとても感謝されたのを見て、私自身も本当に誇らしかったです。

こうした部活動も探究学習も、地域に目を向け活動している部分が非常に大きく、一方で生徒は様々な経験を重ね、しっかりと成長につながっているところに、本校のよさがあると感じています。

興南中学校・高等学校の興南アクト部の部員たち

興南中学校・高等学校からのメッセージ

興南中学校・高等学校の宇栄原先生

▲インタビューに対応いただいた、興南中学校・高等学校の宇栄原先生

編集部

最後に、興南中学校・高等学校に関心をもった読者の方にメッセージをお願いします。

宇栄原先生

まず、中学受験、高校受験ともに、しっかりとホームページやSNS、学校説明会などで本校の情報を入手していただき、「本当に自分の子どもはこの学校に合うのか」、もしくは「この学校なら子どもは行きたいと言うかどうか」についてしっかり考えたうえで、受験を検討していただきたいと思います。

特に本校ですと、探究学習も部活動も盛んで、人前で話す機会も多いということは、今回の説明でもご理解いただけたのではないかと思います。そういった学校の特徴もしっかり踏まえたうえで、ぜひ本校も選択肢の一つとして考えていただければありがたいです。

編集部

本日はありがとうございました。

興南中学校・高等学校の進学実績

興南中学校・高等学校では、例年様々な大学に合格者を輩出しています。2024年度の合格実績では、国公立は地元の琉球大学(医学部医学科を含む)をはじめ、九州大学、筑波大学など、私立は慶應義塾大学、上智大学、東京理科大学など、難関大学に多くの生徒が進学しています。

■興南中学校・高等学校の進学実績(公式サイト)
https://konan-h.ed.jp/college/

興南中学校・高等学校の保護者・在校生の口コミ

ここでは、興南中学校・高等学校の在校生、卒業生、保護者から寄せられた口コミを一部抜粋して紹介します。

(保護者)総合学習の「興南まなVIVA」では、他学年の生徒とチームを組んで社会問題等にアプローチしており、学力以外に必要な力を養える良い学校だと思う。

(保護者)勉強だけでなく、生活面も部活動も担任や監督が見守りサポートしてくれる。勉学だけでなくスポーツも良い実績を残しており、素晴らしい。

(在校生)明るく元気で礼儀正しい生徒が多い。色んなタイプの人がいるため、自分とは違う価値観や考え方を持つ人たちと関わる機会が得られる、世界が広がる。

口コミでは、熱心に指導する先生方に対する高い評価のほか、学力だけではなく、探究学習や部活動などにも活発で、バランスよく取り組める環境が優れているという声が目立ちました。また、礼儀正しい生徒が多い点を挙げる声が多く、落ち着いた校風が評価されているようです。

興南中学校・高等学校へのお問い合わせ

興南中学校・高等学校の校舎

運営 学校法人 興南学園
住所 沖縄県那覇市古島1-7-1
電話番号 098-884-3293
問い合わせ先 https://konan-h.ed.jp/contact/
公式ページ https://konan-h.ed.jp/

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